第22話 改造人間サマーン~転向性変~

ある日、バイトから帰ってきて風呂から出てくると、兄貴が俺にカルピスを差し出して言った。

「いつも、苦労かけてすまないな、サマーン、いや、直之」

「な、なんだよ、急に」

俺は、兄貴が差し出すカルピスを受け取った。

が。

そこで、今までの様々な出来事が脳裏に甦ってきた。

「まさか、兄さん、また、俺に、何か盛ろうとしてるんじゃないよな?」

「そんな、まさか」

兄貴は、言った。

「俺は、ただ、苦労を労おうとしただけだ。何なら、俺のカルピスと取り替えてやろうか?」

兄貴は、自分が飲もうとしていたコップと、俺のコップを取り替えた。

俺は、兄貴がぐっと飲み干すのを確認すると、自分もそれを飲み干した。


翌朝。

何だろう。

この違和感。

体が、何か、おかしい。

何だか、わからないが、手足が。

短く、小さく、なっているような。

俺は、自分の手を見た。

白くて、小さな手のひらだった。

「ええっ?」

俺は、ベットに体を起こすと、自分の胸を両手で鷲掴みにした。

そこには。

けっこうな、質量の、胸があった。

「ええっ!」

俺は、両手で股ぐらを押さえた。

ない!

ある筈のものが、そこには、なかった。

俺は、急いで、トイレに走った。

そして。

「何じゃ、ごらぁあ!」

トイレから出てきた俺に、兄貴は、言った。

「おお、ずいぶんと可愛くなったな、サマコ」

「誰が、サマコ、じゃあ!」

俺は、兄貴に詰め寄った。

だが、兄貴を下から見上げる格好になってしまった。

「に、兄さん、これは?」

「ああ 」

兄貴は、言った。

「最近、転○生という映画を見てね。なかなか、面白かったし、世の兄の憧れでもあるから、性転換薬を作ってみたんだ」

「なんですと?」

俺は、鏡を覗き込んだ。

そこには。

ショーとへアの美少女が、いた。

「わあぁあぁっ!マジか!」

「ほら」

兄貴は、俺に、言った。

「お兄ちゃん、と呼んでごらん、サマコ」

「誰が」

俺は、兄貴をどついた。

「サマコ、じゃあ!」


「というわけで」

ぼこぼこになった兄貴が、スタッフルームで、ボードの前で話始めた。

「正義の味方、サマーン改め、サマコの今後について話し合いたいと思います」

「はい」

田中君が挙手した。

兄貴が、田中君に向かって言った。

「何だ?田中君」

「妹さんを、僕に、ください」

田中君が言うと、兄貴は、笑って言った。

「却下」

「何で、です?」

田中君が、食い下がるのに、兄貴が、言い放った。

「うちの妹をどぐされ変態の嫁にするわけには、いかん!」

「これからは、悔い改めます」

田中君は、言った。

「サマコさんには、縄をかけるような真似は、決して、しません。たぶん」

「本当か?」

兄貴が言った。

「なら、考えてみよう」

「ありがとうございます、お兄さん」

「やめてくれ!変なところで、手を打つのは!」

俺は、叫んだ。

メガネっ娘 川島さんが、なぜか、息をあらげて、俺を見ながら、言った。

「萌えるぅ!萌えてるぅ!」

「えっ?」

俺がきくと、川島さんが言った。

「これから、私のことをお姉さまって、呼んでもいいのよ、サマコ」

「何、それ?」

俺は、俺を見る間さんと安井さんのアブノーマルな目に気づいて、背筋に冷たいものが走った。

「兄さん!」

俺は、叫んだ。

「すぐに、もとに戻してくれ!今、すぐ!」

「まあ、待て、サマコ」

兄貴が、はあはあ、言いながら、俺に近づいてくる。

「お兄ちゃんと、遊んでから、な」

「こっちの、お兄ちゃんたちも、いるよ、サマコちゃん」

「お姉さまと呼んで!」

「君は、僕の、お嫁、だ!」

「ぎぃやぁあぁぁぁっ!!」


四半時後。

「勝者!サマコ!」

雅が、半裸になった俺の手を取って、高く持ち上げた。

俺は、俺に襲い来る全ての獣たちを打ち負かした。

屍ルイルイとなったスタッフルームを俺たちは、後にした。


それから、しばらくの間、俺と、雅と、文子は、キャッ○アイごっこをスナック『桶狭間』でして、過ごした。

バイト代は、1700円で、俺は、密かに、女になるのも、悪くはないな、と思っていたのだった。



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