第13話 改造人間サマーン~激闘変~

厄災は、忘れた頃にやってくる。

その日、俺は、探偵事務所のバイトを終えて、深夜に帰宅した。

すると。

ハイツの前の駐車場に間さんが倒れていた。

俺は、駆け寄り、声をかけた。

「どうしたんですか?間さん」

「ああ、サマーン」

間さんが、弱々しく俺に手を伸ばして言った。

「敵襲、だ。安井君と、川崎さんが、やられた。そして、田中君が」

「田中君が、どうしたんです?」

俺がきくと、間さんが言った。

「田中君が、拐われた。敵の怪人に、無理矢理、連れていかれた」

「まじで?」

俺は、きいた。

「兄貴と、雅は?」

「団長と、雅さんは、駅裏のラブホテルの偵察中で、留守だ」

「あ、そう」

俺は、立ち上がり、家へと歩き出した。

「おい!」

間さんが、俺の背に向かって、怒鳴った。

「放置、かよ!」

「あ、ごめん」

俺は、言った。

「でも、俺、明日も早くて、もう、12時過ぎてるし、お肌が」

「肌なんかより、もっと、大事なものがあるでしょ!」

間さんが激昂したので、俺は、言った。

「お前らが、それを、言うのかよ!」

「うるさい!!」

誰かが、どこからか、怒鳴った。

俺たちは、口を閉じて、お互いを見た。

「スタッフルームに行こうか」

俺が言うと、間さんも頷いた。


スタッフルームの中は、ひどい有り様だった。

俺と間さんは、足の踏み場もないほど荒らされて散らかった部屋を片して、ちゃぶ台を置いて座った。

「で?」

俺は、間さんにきいた。

「今度は、なんの遊びをしてるの?」

「遊びなんかじゃないですよ!」

間さんが言った。

「現に、安井君は、救急車で運ばれて、川島さんは」

「川島さんも、何かされたの?」

「いえ 」

間さんが、言った。

「彼女は、大丈夫です。ただ、安井君の付き添いで病院に行ってるだけで」

「安井さん、すごい怪我なの?」

俺がきくと、間さんが言った。

「いえ」

挟まさんは、言った。

「糖尿病の低血糖だそうです」

「なんだよ、それ!」

俺は、ちゃぶ台をどん、と叩いた。

「敵とか言って、やっぱり、俺をからかってるんだろ?」

「違いますって」

間さんが言った。

「田中君が拐われたのは、本当ですよ」


何でも、いつものように、スタッフルームでくつろいでいた間さんたちのもとに、突然、宅急便の配達員を装った連中が5、6人、現れたのだという。

「やつらは、俺たちを蹂躙し、そして、川島さんの眼鏡を踏みにじり、そして、田中君を」

「田中君を?」

俺が聞くと、間さんは、ごくりと唾を飲み込んで言った。

「解剖してやる、って、連れていかれました」

「解剖?」

「そうです」

間さんが言った。

「解剖」

「何、それ?」

俺がしらっとしてきくと、間さんが真剣に言った。

「きっと、田中君は、かわいい顔してるから、今ごろ、あんなことや、こんなことをされて」

「あんなことや、こんなことって、何だよ?」

「だから」

間さんが頬を染めながら言った。

「とても、俺からは言えませんが、その○頭攻めとか、輪○とか、いろいろ」

「ええっ?」

俺は、身を乗り出した。

「本当に?」

「本当ですよ」

「マジか」

俺は、いろいろ考えてから、ため息をついて、立ち上がった。

「じゃあ、田中君の救出は、明日の議題ということで」

「そんな、悠長な!」

間さんが、俺の足にしがみついて言った。

「田中君が廃人にされちゃいますよ!」

「まさか」

俺は、言った。

「あいつは、そんな柔な奴じゃねぇだろ」

「もし」

間さんが言った。

「サマーン、いや、直之さんが、田中君のピンチを知ってて見捨てたと知ったら、帰ってきてからどんなことになりますかねぇ」

「はぁ?」

俺がきくと、間さんがぼそぼそと言った。

「田中君って、けっこう、思い詰めるタイプだし、どんな報復をされるかと思うと」

「思うと?」

俺は、なんか、嫌な感じがしていた。

間さんが俺の方を見て言った。

「直之さんのことが心配で」

俺は、考え込んだ。

確かに。

奴なら、たとえ、虎の穴からでも、生きて、自力で帰ってきそうだが、その後のことを考えると、どんな復習をされるか、わかったものではない。

奴のことだ。

きっと、魔○郎並みに、すごい復讐をするに違いない。

俺は、間さんにきいた。

「敵は、どんな奴等だったんだ?」

「はい」

間さんが言った。

「一人は、サングラスをかけた、ワンレン、ボディコンの女でした」

「昭和だな」

俺は、言った。

「他の奴等は?」

「サマーン並みのムキムキ筋肉の男、それも、イケメンばかりが、ビキニ一枚でポーズをとってました」

「マジで?」

俺は、きいた。

間さんが頷いた。

「間違いありません」

敵は、変態集団、なのか?

俺は、立ち上がった。

「すぐに、田中君を救出に行くぞ!」

「はい」

俺は、部屋から駆け出すと立ち止まって空を見た。

間さんがきいた。

「どうしたんです?」

「敵は、どこにいるんだ?」

「わかりません」

間さんが言った。

「ただ、ボディコン女が、こんなものを」

間さんは、俺に一枚の名刺を渡した。

そこには。

『SMサロン サド子の部屋』

俺は、言った。

「やっぱり、明日にする?」

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