第14話 改造人間サマーン~調教変~

『SMサロン サド子の部屋』は、意外なことに閑静な住宅街の一角にあった。

ちょっと、気後れするような豪邸。

そこには、さすがに、こんな看板が出てはいなくて、ただ、『会員制サロン』とだけあった。

俺は、名刺を確認しながら、呼び鈴を押した。

「いらっしゃいませ」

年配のメイド頭のような女が、アンティークなドレスを着て現れた。

俺は、名刺を見せてきいた。

「これは、ここのこと?」

「はい」

女は、名刺を見て、頷いた。

「確かに、ここでございます」


メイド頭みたいな女は、俺を豪華な待合室のような部屋へと通した。

そこは、シャンデリアが照らし出す、ちょっとした、宮殿のような空間になっていた。

俺は、ふかふかのソファに腰かけて、館の主が来るのを待っていた。

すると。

大きな観音開きの扉が開いて、すごい豪奢な衣装を見に纏った、マダムな女が、現れた。

女は、俺に言った。

「ようこそ、悪の組織 アストロ団のお方、お待ちしておりましたわ」

「はぁ」

俺は、とりあえず、聞いてみた。

「何で、田中君を拐ったんです?」

「彼を拐ったのは、美しかったから。だけど、それは、私の最大の過ちだったのです」

「はい?」

俺は、鳩が豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべていた。

マダムは、そんな俺に、言った。

「どうか、あの少年を連れてお帰りになってください。そして、二度と、この地を、彼が訪れることがないようにしていただきたいのです」

「はぁ?」

俺は、何が言いたいのか、よくわからなかった。

俺が、頷くと、マダムは、安堵からその場にくずおれた。

「大丈夫ですか?」

マダムは、黙って頷いた。

なんだか、マダムや、この屋敷内部に漂う、 可笑しな雰囲気は、気のせいじゃないらしい。

そして。

マダムは、俺を、ある部屋へと案内してくれた。

そこは、薄暗い室内を蝋燭の明かりだけが照らし出す何やら、怪しい感じがする部屋だった。

ぴしっ、ぴしっ。

何か、乾いた音が、響き渡っているのが、聞こえてきた。

「こちらへ」

マダムに導かれ、俺は、部屋の奥へと向かった。

そこには。

皮のスーツを身に纏った小柄な仮面の人物が、口枷をされて、四つん這いになった裸の男たちを鞭でしばいていた。

「この、醜い豚どもが!僕の体に触れようだなんて、1000万年、早いんだよ!」

「あっ」

俺は、気づいてしまった。

あれは。

女王様と化した田中君、だった。

「田中様」

マダムが、ひざまづいて、田中君に言った。

「お迎えの方が参られました。どうか、この辺で、ご勘弁くださいませ」

「何?」

田中君が、俺を見ると、仮面をはずして、駆け寄ってきた。

「直之ぃ!」

田中君は、俺に抱きつこうとしたので、俺は、そっと、距離をとった。

「大丈夫だったみたいだな、田中君」

「ちょっと、きいてよ、直之」

田中君は、言った。

「この連中が僕のことを調教しようとしたんだよ!」

「俺には、お前が、この人たちを調教しているように見えたんだが」

俺が言うと、田中君が言った。

「ああ、これ?あんまり、ここの連中の調教がなってなかったから、ちょっと、僕がしつけてやってただけだよ」

「そうなんだ」

俺は、言った。

「ここの皆さんも、いいって言われてるし、間さんも心配してるから、そろそろ、帰ろうか?」

「そうだね」

田中君が言ってから、にやりと笑った。

「でも、その前に」

「何?」

突然、俺をさっきまで調教されていた連中が、がしっ、と 、捕まえて動きを封じようとしてきた。

田中君が、ロープを持って、俺に迫ってくる。

「直之、君も、調教してあげる」

「ええっ?」

俺は、焦って、手を振り回した。

さすがは、改造人間のパワーだった。

田中君の僕たちは、なすすべもなく、吹き飛ばされた。

俺は、田中君に言った。

「バカなことばかり、いってないで、一緒に、帰ろう」

「直之」

田中君が静かに、頷いた。


それから、3日後のことだった。

学校から帰った俺がポストを見ると、黒い封筒が一通入っていた。

差出人の名前はなかったが、俺宛のようだった。

俺が中を確かめると、そこには。

『ご入会ありがとうございます』

それは、例のサロンからのものだった。

何で、入会?

そう、俺が思っていたら、偶然、通りかかった田中君が言った。

「あ、直之のところにも届いたんだね。よかった。これで、二人で一緒に、サロンに通えるね」

「ええっ?」

俺が、田中君を見ると、田中くんは、にやりと笑って、言った。

「楽しみだなぁ、直之を調教するの」

なぜか、呼吸の荒い、田中君に、俺は、宇宙の果てまで、マックスでひいていた。


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