第12話 改造人間サマーン~営業変~

「諸君!今日は、悪の組織 アストロ団の名を世に知らしめるために、わざわざ、ここまで、やってきたのだ。ぜひとも、その爪痕を刻んでくれ!」

「らじゃ、団長!」

アストロ団のスタッフ全員が、団長である兄貴に敬礼しているのを、俺は、冷ややかな目で見ていた。

兄貴が言った。

「大丈夫だ、サマーン。お前の出番もちゃんとあるぞ!安心するがいい!」

「そんなものは、要らん!」

俺は、きっぱりと、言い放った。


「というわけで」

兄貴は、言った。

「本日は、大○デパートの屋上にて、営業活動をします。よろしこ」

「イェーイ!」

雅が、露出過多のコスプレで拍手した。

「イェー!」

間さんと、安井さんが、黒の全身タイツを頭から着用して、叫んだ。

めがねっ娘、川島さんが頬を赤らめて言った。

「あの、私、この恰好じゃなきゃ、いけませんか」

露出多めのお色気魔女っ子的コスチュームの川島さんは、赤面しながら、スカートを引っ張っていた。

「僕も」

田中君がセーラー服姿で、長髪の鬘をつけて抗議した。

「なんで、女装なのさ?」

「女装の方がサマーンが萌えるのだよ、田中君」

兄貴が言うと、田中君は、少し考え込んでから、言った。

「なら、いい」

「いいんですかぁ!」

川島さんが、叫んだ。

「いや、全然、よくないですよね?」

「悪の戦闘員がパンチラぐらいで動揺してどうするの?めがねっ娘!」

ほぼ、裸同然のきわどいコスプレ姿の雅が、堂々と言い放った。

「これは、悪の組織の戦闘服、よ!」

「そうなんですか?」

川島さんが騙されかけていたので、俺は、言った。

「そんなわけないだろう!」

「やっぱり!」

川島さんが、騒いでいるのに、兄貴が言った。

「大丈夫だ。エロピンクメガネ、よ。そのパンチラは、見せパンだ!」

「見せパン!」

間さんと、安井さんが、盛り上がる。

「見せパン、万歳!」

「そうなんですか?」

なぜか、川島さんが、納得してしまった。

長いものに巻かれたのか?

俺は、思っていた。

「さあ、サマーン!お前も、準備は、いいか?」

「よくないよ」

俺は、叫んだ。

「これは、なんだよ!」

俺の衣装は、いつもの虎柄のタイツの上半身に、なぜか、下半身は、白鳥がついていた。

「何のつもりだよ!」

「いや」

兄貴が言った。

「いつも、お前は、ビキニだと、ハミチ○するので、コンプライアンス的にNGだから、今日は、よい子のために、白鳥で隠してみたんだが、何か、問題でも?」

「大あり、だよ!」

俺は、より変態度が高まったコスプレ姿で、叫んだ。

その時、デパートのスタッフのお姉さんのアナウンスがかかった。

「ただいまより、悪の組織 アストロ団によるミュージカル『白鳥の湖』が始まります。よい子の皆さんは、席に座ってお楽しみください」


この寸劇が、始まってしまった以上、やらないわけには、いかなかった。

なぜなら、この営業をしなくては、今月の家賃が払えないからだ。

劇は、ひどい出来で、中でも、中盤に差し掛かったところで、現れた主人公である俺の姿を見て、泣き出した子供が何人かいた。

「ちょっと、あんたたち、これは、酷すぎるよ!撤収、撤収!」

俺たちのショーを見ていた支配人が叫んだ。

「もちろん、今日のギャラは、なし!」

「それは、困る」

兄貴が現れて、言った。

「どうか、これで、勘弁してもらえないだろうか」

兄貴がボタンを押すと、床から強風が吹いて、雅と、めがねっ娘 川島さんと、田中君のスカートがめくれた。

「ええっ?」と、田中君。

「キャー!」と、川島さん。

「ヤッホーイ!」

なぜか、雅だけは、喜んでいた。

「し、仕方ないな」

支配人が、鼻の下を伸ばして言った。

「今日のところは、勘弁してやる」

「ははーっ!おありがとうございますだ」

スタッフ全員が、支配人に向かってひれ伏した。

「いい?」

デパートのスタッフのお姉さんが、よい子の皆に言い聞かせるのを俺は、見てしまった。

「今日、見たことは、お家の皆には、内緒よ!」


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