第3話 外に来てまでゲームをする。

 やって来たゲームセンター。公共の場でゲームをするのが初めてな俺たちにはキラキラしている、とても幸せな空間に思える。

 ちなみに俺たちがいつもやっているゲームはただゾンビを倒したり、鉱山を掘ったり、たまにマグマに落ちて死んだりする『クラウドタウン』という名の有名で人気なもの。ここにはそれと似ている内容のゲームもあれば、リズムゲームなんかもある。さて、どれから始めようか。

「ひとまず、『クラウドタウン』と同じくゾンビが出てくるシューティングゲームにしませんか?」

「お、いいな。やるか。絶対勝ってやる」

 なんて言ってはみたものの、実際にやったことのないゲームなんてできるんだろうか。これでできなかったら最悪だ。

 それに紫は俺の組んでいるペアは割と有名で、なにかのキャンペーンのときには順位で言えば数多くのプレーヤーたちを抑えてトップテンに入ることだってあった。要するに紫は強いということだ。さあ、どうなるだろう。


『Ready Go!』

 とやけに発音のいい英語とともに勝負が始まった。普段の『クラウドタウン』はパソコンやスマホでできるため、体を使わないのに対して、このシューティングゲームは実際に銃の形を模したものを使っているためやはり最初は慣れない。

 それは紫も同じようで、「うぅ……」と唸りながらゾンビと戦っている。だがそれも最初のうち。慣れとは怖いもので、家でのゲームのように両者ともみるみる強くなっていった。

 ドン、ドンと画面の中で銃声が鳴り響く。その音につられたかのように、他の客がこれでもかというくらいに俺たちを観戦しているのがわかる。

 あまりこういうのはなれるものではないが、中には「頑張れ」や「いけー!」と応援してくれている声もあるのでそれはうれしい。ところどころ「おい兄ちゃん! なにしてんだ」みたいな俺への批判の声も聞こえてくるんだけどな……。

 負けじとゾンビに向かって銃を向ける。今の紫との差はほとんどない。さっきから俺が上がって紫がまた上がって、それをさらに追い越して彼女がまた続くといったことが繰り返されているからだ。

 もしかしたらいつもペアを組んでゲームをしているせいで、自然と同じペースでプレイするような癖がついてしまったのかもしれない。それはそれでうれしいし、楽しみ甲斐がある。

 ただ問題は、どれほど続けても勝負が終わらないことだろうか。息が合いすぎてもはやチームプレイだ。

「なあ紫、これっていつ終わるんだ?」

「いつなんでしょうね。いつまでも終わらない気しかしないんですが……」

「やっぱりそうだよな」

 どうしたものか。

「あのぉ、なにか別のことをしませんか? 時間はあまりないですし、そろそろ並んでいる人が……」

 確かに。俺らが完全に邪魔している状態だ。

「そうするか」

 こうしてシューティングゲーム勝負は引き分けにて終了した。


「次はゲームではないんですが、やりたいものがあるんです。いいですか?」

「ああ、いいけど……。なにをするんだ?」

 嫌な予感がしていたのはこれか。今目の前にある、きらきらと飾られている機械。いったい、これは……。

「これはですね、プリクラというプリントシールを作れる機械なんです! 自分たちの写真を撮って、可愛くデコレーションするんです」

「まあ実際に使ったことはないんですけどね」と肩をすくめる紫。可愛い。……じゃなくて、デコレーションするってなんだよ。紫ひとりじゃダメなのか。俺は男だ。断じて、絶対に……。


 はあ、なんでこんなことになってしまったんだ。結局紫の期待の目に耐えられずにつれてこられた。この輝いている瞳に勝てる奴なんかどこにもいないと思うぞ。

 このどでかい機械は『はい、チーズ』とか『次はウサギのポーズをしてみよう』とか『ハートマークを作ってね』とかを言ってパシャパシャとシャッターを切りながら自動で撮影している。

 見ているだけなら画期的なものだと思うが、実際に使ってみると男の俺にはだいぶきつい。それも紫が勝手にカップルモードにしたからなんとも恥ずかしいことをされそうになった。

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