第2話
困ったな。
「りょう君、暖かくていい匂い~ ぜったいに誰にもりょう君は渡さないもんねー」
いや、イチャイチャしてくれる事に対してではなくて。
造ることばかりで、重大な事を忘れていた。
まるで犬や猫のような言い方になるのが、引っかかるけど、親に何て説明しようかなって問題を今のいままで忘れてた。
錬金術っで造っちゃった?
拾った?
彼女? よし、これだな。きっと両親も遠慮して、部屋に近寄って来ないだろうし、そう言おう。嘘ついてる訳でもないから、良心が痛むこともない。
「でもここじゃ寒いから、僕の家に行こっか」
「行く!」
かわいい。
「うぬぬー」
可愛すぎて、思わずほっぺたもちもちしちゃった。配合にミスは無かったようで、理想的なもちもち具合。もはや水の塊。クラゲ。水風船。わらびもち。おもちもちもち雪○だいふく。
再び、憧れの恋人繋ぎでもって、ようやく帰路につく。冬枯れの物寂しい道も、今日は幸福へと続くプロムナード。浮き世は定めなきこそいみじけれ。
「ここがりょう君のおうちなんだぁ」
「これからはシオンの家でもあるんだよ」
「わたしたちだけの宮殿だね!」
「僕の親もいるけどね」
「いない!?」
結婚記念に二人で旅行へ行くという、ラブラブ具合に、息子としてはありがたいような辟易するような複雑な感情を抱きつつ、シオンを連れてくることに成功したので、良しとしておこう。
「そう言えば、シオンって名前は自分で考えたの?」
生みの親たる僕は命名していない。いろいろと候補はあったものの、可愛らしい名前を不思議なことに、元々持っていたので、そのまま呼ぶことにしたが、一体これはどういうことだ?
「生まれる前から、わたしはシオンだったし、りょう君もりょう君なんだよ」
哲学というか神学というか、なかなか深遠な話だったので、よく分からないが、ともかく、シオン自身が考えた訳ではないのか?
では誰が? 神さま? 創造主は僕では?
「りょう君、シオンって名前、変かな?」
「ちっとも変じゃないよ! めちゃくちゃ可愛いよ!」
「りょう君ならきっとそう言ってくれると思った」
小悪魔ちゃんめ。
「わぁー本が多いねー。どれも難しそー」
「自慢じゃないけど、かなり難しいよ。でも、諦めずに頑張ってこれたから、こうしてシオンが隣にいる」
「うん」
「ずっとこの日が来るのを待ち望んでたんだ」
「わたしもりょう君と逢えて、一生分の運使っちゃったかも」
「僕も」
お互いに笑いあった。確かに運はもう無いかもしれないけれど、最高の幸せが手の中にある。なら、どんな苦難があろうとも、僕は彼女とともに―――
ぐぅ~
小さなお腹が鳴る。これまた小さな手で顔を隠す。隠れきっていない部分は、真っ赤に染まっていた。
「ご飯食べよっか」
「うん……お腹、すいた」
縮こまって、消え入るかのような声量。子どもっぽい見た目だが、中身も違和感なくてグッドです。世に言うロリコンではないはずだが、少なくとも容姿は年下。
妹が居ればこんな感じだったのだろうか。
「りょう君と同じモノを食べられるってとっても幸せ。あ、そうだ! わたしに何か教えてよ!」
「作ってくれるの……!?」
やっぱり僕のシオンは最強。でも、僕自身、料理はそんなにしないから、温かい
「この粉はなに? 聞いちゃ駄目なヤツ?」
「いや、大丈夫だから!? 単なるインスタントだしだから」
「ねえ、もう一つ聞いてもいい?」
「なに?」
「わたしを造った時は、お料理みたいな気持ちだった……?」
「え、いや……」
「変なこと聞いちゃったかな、ごめんね。でも、わたし、これから一緒にご飯が食べられると思うと幸せなんだ。調味料は愛って感じかな、えへへ」
「そうだね……!」
思わず泣きそうになったわ。天使、いや
「えい!」
「!!??」
「これは隠し味だから見ちゃダメだよ」
いや、左手の人差し指を軽く刺して、かつおだしにほんのちょっと血液を垂らした部分は見逃してませんよ。
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