第7話
――――プルルルル
『はい、丸山です』
「私だが……今大丈夫か?」
『え?……あなた?あなたですか?こんな時間になにかあったのですか!?』
会社から電話をするのは、余程の時だ。突然の電話に女房はびっくりしている。
「えっと、今日の夕飯はなにかね」
『ゆ、夕飯ですか?あ、あなたの好きなハヤシライスです』
「何か……必要な材料はあるか?その、買い出しで足らないものとか、買って帰ってほしい物とか……」
『何言ってるんですか……?私がちゃんとやりますから……それで用件は……?』
「いや、それだけで、その、買い物にたまたま行くから、ついでを……」
『…………』
「ど、どうした?」
『いえ、ちょっとびっくりしてしまってごめんなさい。必要なものは無いです。ありがとう。私がすべてやりますから』
必要なものを聞いたが、女房はそんなことはする必要がないと戸惑っていた。今まで、私が家事は全て女房がやるのが当たり前だと押し付けてしまった結果かもしれない。夕飯中、お酒がグラスに足りなければ気が付いて注いで貰うのが当たり前だった。それが出来ないと怒ってしまっていた。いつも気を使わせてしまっていた。それが、当たり前だと思っていた。
『どうされたの……?急に……』
「ど、どうもしてない。買うものを聞きたいんだ、いいからあるなら言うんだ」
私は素直になれず、いつもの強い口調で買うものを求める。どうして、女房の前ではいつも優しくなれないのだろうか。そう思っていると返事があった。
『あ、なら、あなたの好きなワインを買ってきて頂けるかしら?あなたが一番飲みたいワインをお願いしても良い……?私が買うと……たまに失敗してしまうから……あなたの好みのものが選べるでしょう?』
――――プチッ
私は返事をせず。切ってしまった。いつまで素直になれないまま威張っているのだろうか。
女房はいつも私の事を考えてくれているというのに。それが当たり前になってしまってるというのに。
「あいつのすきなワインってどんな味だっけ……」
電話の後、一生懸命昔の事を思い出しながら考えた。
そして退社後、持って帰りたいワインを探しにいった。
社長 白咲夢彩 @mia_mia
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