第6話
「考え方での話ですが……」
「仕事……仕事と同じか……」
「そうです、仕事でのPDCAサイクルで考えてみたら、社長には楽かもしれません」
「計画実行評価改善か?」
彼女は私の頭が柔らかくないことを知っているのであろう。わかりやすく説明し始めてくれた。
「新商品の売り上げを上げたいという目標があるとして、計画し準備すると思いますが……それと同じで、おいしい夕飯を食べたいと思ったなら、そのための食材の準備を社長がすれば良いのです。そして、その後、金額や品質について奥様から指摘があったなら安い物や高い物、良い物などを選別して一緒に考えながら次は探せば良いですし……そうやって生活してみてはどうですか?」
「野菜の値段の相場や買い時も毎日変わりますし、お店に行くことで、いろいろ発見がありますよ。そういった買い物事情を理解すると夫婦の会話も弾みます」
「生活の一部を仕事での目標に置き換えて考えるとわかりやすいかもしれません。一緒に生活をより良くするために考えるのは案外楽しいですよ」
よく考えればわかったはずなのになぜ気がつかなかったのだろうか。仕事だってより良くするために皆で考えるじゃないか。私は、家ではする必要がないと勝手に決めつけていたのか。
「なるほど……考えたこともなかった……君は天才だな……まるで、家庭の社長のようだ。そうやって、いつも考えて生活しているのだな……私の下積み時代は、元社長の考えを理解するために一生懸命勉強したものだ」
「まず今は買い物を勉強してみると何か見えてくるかもしれません。あと、私は社長ではありませんよ、旦那とは対等な立場でいたいだけです」
「対等な立場……」
そうか、私は女房と同じ目線で、生活が出来ていないだけだったのか。同じ目線で、仕事を同期と取り組んでいた時代があったように、家でもそんな日々を作ってみても良いかもしれない。
「女房に電話を入れてみるよ、ありがとう」
私は誰いない応接室まで行き、電話を掛けることにした。
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