おわりの回

 ハクギンドウに戻ると、全員が何かの準備をしていた。話しかけずらい雰囲気だったので、目立つところで立って待っていた。そのうちだれかが気づいて話しかけてくるだろうと思っていたが、誰も話しかけてこなかった。

 ナチョスに話しかけてもらった。もちろん、物理的にではなく直接だ。

 全員の動きが止まった。こちらに集まってきた。

 「それは、セカイだね」

 山城さんが、普通に話し出した。

「妙だな。セカイがこの施設に入った瞬間に私たちは気が付くようにできているんだよ。感覚的にね。それに、システムもきちんと構築してある。だから、視覚でも認識できるんだよ。それなのに、やっぱり・・・」

 全員がセカイを見つめた。セカイは、私の後ろに移動した。

「山城さん、このセカイは話ができる少し変わったタイプみたいです。ナチョスという名前も持ってます」

 そのあと、ナチョスとのいきさつを話した。全員が不思議そうな顔でナチョスを見ていた。

 最後にナチョスが、私の足を少し食べたから、ナチョス自体がセカイとエイトマンの間のような存在になったのではないかといった。

 全員が、納得したみたいだった。


 島を食べたセカイは、糸満市役所のほうへ移動しているみたいだった。

 今は海上を移動しているから特に大きな被害は出ていないが、潮崎あたりから上陸するはずだから被害が莫大になる。と、山城さんは言った。

「全員いそげー」

 不謹慎だが、なんだか楽しそうに見えた。

「高橋君もナチョス食べちゃって」

 ???

「パワーアップだよ」

 山城さんは、ナチョスは何かの縁だから、吸収しておいたほうがいいと言った。私は、何も答えず山城さんの背中を見ていた。

「それじゃ、出発」

 全員がいつも通りの格好で回天に乗り込んだ。


 海が荒れていた。いつもより高い波が寄せてきている。

 南浜公園から地上に出た私たちは、管理棟の最上階にいた。ここなら潮崎がかなり見渡せる。

「どうして、潮崎って予測できるんですか?」

「大城さんが、誘導してくれているからだよ」

 大城さんも、ナチョスのようにテレパシー的な能力があるみたいだ。だけど、制限付きのようで、山城さんしか受信できないと教えてくれた。

 突如、それまでとは比較にならないくらいの波が目の前に現れた。映画のワンシーンみたいに。

 おぉ・・・。数歩引いてしまった。周りを見たら引いたのは、私だけだった。恥ずかしい。

 目の前の大波に、山城さん、金城さん、上原さんがぶら下がる形でくっついていた。照屋さんと喜納さんと伊敷さんは、そのまま腰を下ろしほのぼのしていた。

「そんなにほのぼのしていていいんですか」

「いいの。いいの。セカイなんてみんな子供みたいなものだから。ちょっと遊んだらすぐに帰るものよ」

 照屋さんは、一番ほのぼのしながら答えた。

「ナチョスちゃんも海に行きなさい」

 喜納さんは、ナチョスをつかみ、セカイのほうへ投げた。うわっ。私が、声を上げてしまった。ナチョスはそのままセカイにくっついた。

「高橋君もこれ食べなさい」

 餅とサータアンダギーを出してきた。仕方なく腰を下ろし、海を眺めていた。


 不思議なことに、どんどん空が晴れていき、大波が小さくなり、荒れてた海面が穏やかになった。よく晴れた気持ちのいい休日ようになった。

 しばらくして、砂浜から山城さんと、大城さんと、金城さんと、少し縮んだ上原さんが帰ってきた。

 ナチョスは?と聞くと、大城さんの背中にくっつく形で帰ってきた。


 結局、私は特に何もしなかった。よくわからないままセカイが撃退され、よくわからないまま全員が帰ってきた。よくわからないまま話せるセカイと友達になった。


 一つだけ確かなことは、私自体がエイトマンになってしまったことだ。

 

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エイトマンVSセカイ @m89

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