私はの回

「大城さんが祖先って、どうゆうことですか。さっきまで話していたし・・・」

「高橋君、私たちはね年をとらないんだよ。繁殖はするけどね」

 私は山城さんの言っていることが、まったく理解できなかった。

「大城さんはセカイに吸収されと言ったでしょう。セカイも私たちも栄養と取るときは、液体にして体の中に養分を蓄えているんだよ。固体を液体に変えて体に吸収する。この辺は人間と似てる。だけど、吸収の仕方が人間と違う」

 話が急すぎる。やはり解らない。そして、年をとらないという話は、完全に忘れたほうがいい。

「融合していく感じなんだ。簡単にゆうと細胞分裂の逆のイメージ。たくさんの違う物質を自分に合った物質に変えて融合していく。この時、違う物質を自分に合った物質に変えるのに非常に時間がかかるしエネルギーも使う。逆に同じ、もしくは、同系の物質だと、さほどエネルギーを使わずに、融合できる」

「それだと、大城さんはすぐに融合されてしまうじゃないですか」

 思わず立ち上がってしまった。

「落ち着きなさい、高橋君。いいかい、ここからが大切なところなんだよ。よくきいて。同じ物質だとセカイのほうも吸収したかどうかを確認できないんだよ。異物だったらすぐにわかるけどね。だって、体の中にストレスがある感じだから。同じ物質だったら何も感じない」

 山城さんは、ゆっくり話し続ける。

「つまり、大城さんは、セカイの中にいるけどすぐに融合されるわけではくて、隠れて私たちを待っているんだよ。もちろん、セカイのエネルギーがなくなり大城さんに気が付くまでの話だよ。逆に大城さんは、セカイから少しづつだけど、エネルギーを摂取できるから、2日くらいなら大丈夫。幸い、このセカイは、島を一つ食べた後に大城さんを食べたみたいだから、もう少し、大城さんに気が付かないかもしれないけど」

 西崎での違和感は、島一つ消えたことだった。


 金城さんと上原さんが戻ってきた。上原さんは左肩がドロドロになっていた。金城さんは下半身がなくなっていた。

 3人は話し始めた。徐々に再生していく身体を眺めらがら、何とか話を聞いた。

「高橋君は、家電とエアコン取付が来るころだね」

 唐突に、山城さんが言った。私は、目を合わせないようにした。なんとなく緊迫感を演出したかった。

「高橋君が戻ってきてから、続きの話をするから行っておいで」

 うまく部屋から出された。

 しょうがなく階段を上っていくと、ハクギンドウではなく西崎親水公園というところに出た。目の前の駐車場に乗っていたレンタカーが止まっていた。もう何も驚かないつもりだったが、やはり驚いた。

 部屋に帰ると、巨大なクッションくらいのナチョスが転がっていた。転がるナチョスを見て私は、「ナチョスもセカイなのか?」と思った。

「そうだよ」

 転がり続けるナチョスが答えた。

 そんな予感はしていた。

 ナチョスにセカイのことを聞いた。ナチョス自体は分裂の分裂だから古い記憶がないが、8人がこっちの世界に来る少し前の記憶ぐらいまでならあると答えた。


 セカイ側は動物的な思考になって、エイトマン側は知能的な思考になった。狭い星、僕たちはどちらかにつかなければいけなくなった。セカイ側の思考になったものは会話することをやめて、欲しい時に欲しいだけエネルギーの吸収をしだした。次第に、エスカレートしていって、セカイ側はセカイ側もエイトマン側も関係なく吸収しだして、最後に残ったエイトマン側を追っかけてこの世界に来た。

 僕は、会話ができるセカイ。だけど、弱い。エイトマンに見つかったら、すぐに吸収されてしまうから、隠れて生きてきた。そして、出会った。僕を吸収しないエイトマンに。


「ナチョス、私はエイトマンじゃないよ」

 転がっていたナチョスは、私の足首を食べた。私は足のほうから遅れてきた熱さと足首から下がなくなったことを確認しながら、尻から床に落ちた。声は出なかった。

 不思議と熱さのあと痛みはなく、ゆっくりどろどろの足が出来上がっていった。

「同種には痛みではないんだ。髪の毛を切ったり、爪を切ったりする感覚。すぐ戻る。すこし痛いのは、人間の形をしている部分があるから」

 ナチョスの説明はなんとなく理解できた。ナチョスは少し大きくなっていた。


 インターホンが鳴り、大型家電が届き、予定通りエアコンの取り付けが終わった。

 私は急いでハクギンドウへ向かった。ナチョスを連れて。



  

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