エイトマンVSセカイの回

 回天はハクギンドウについた。私がハッチを開けた時には上原さんと金城さんが目の前にいた。二人は無言のまま回天に乗りそのまま消えた。

 一人残された私は改札を出て、回転灯が回っている部屋へ行った。

 部屋には初めて女性の人がいた。伊敷さんと言った。

 私は大城さんのことを聞いた。伊敷さんはさんぴん茶をいれてくれた。

「今、山城さんが来るから待ってて。5分くらいだと思うけど」

 熱いさんぴん茶は強い香りを発していた。草の匂いが強く感じられた。さんぴん茶の原料ってなんだ?私はわけのわからないことを考え出していた。

「山城です」と、農家のおじさんみたいな人がやってきた。6月なのに麦わら帽子が印象的な人だ。初対面など気にせずに大城さんのことを聞いた。山城さんは落ち着いて腰を下ろし、「さんぴん茶はジャスミン」となぜか小声で教えてくれた。それから、大城さんのことを話し出した。


 大城さんはセカイに取り込まれてしまった。と言っても、消滅したわけではなくて、あくまでも取り込まれているだけだ。助けられる。助けられるといっても、上原君と金城さんがやるわけではなくて、きっかけがあるからそれを見逃さずに全員でやるんだよ。


 突然すぎて、山城さんの言っていることが解らなかった。


 セカイと私たちはもともと同じ世界で暮らしていたんだ。だけど私たちのほうがどうしてもセカイうまく暮らしていけなくて、最終的に8人にまで減ってしまった。つまり、セカイに吸収されたんだ。これ以上この世界にいたら全滅してしまうと考えて、世界を捨てることにしたんだよ。

 そして、こっち側に来た。その時、偶然、暮らし始めたのが沖縄県のこの土地だった。何もなかった私たちは、まずこの世界の知識を身につけることから始めた。体も人間に合わせた。名前も持った。大城、金城、上原、山城、喜納、伊敷、照屋。そして、それぞれ距離を保って暮らすことにした。一緒にいたら、またセカイにやられるかもしれないからね。

 この土地の先住民たちは私たちのことを外国人だと思い「エイトマン」と呼んだ。8人だったからね。いつしか「エイトマン」がなまって「イトマン」になり、この辺が「イトマン」と呼ばれるようになった。そのあと、琉球だとか、戦争だとか、占領だとかあって「糸満市」になった。

 高橋君、君の奥さんの旧姓は上原さんだったでしょ。奥さんの先祖が私たちの仲間だったんだよ。


 私は一回も自分のことを話してないのに、山城さんは私のことを知っていた。


 そして、これは私たちも本当に驚いたんだけど、高橋君の遠い先祖が、大城さんなんだよ。だから、私たちは、初めから君を待っていた。


 !!!←頭にこれが浮かんだのは人生で初めてだった。漫画の中だけで使わっれるやつだと思っていた。目をぱちぱちしながら、口がポカーンになっていることに私は気が付かなかった。誰にも指摘されないまま、自分で気づき、口を閉じた。


 

 

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