上原さんの回

 モーターのお陰かもしれないけど、確かに回天の中は静かだった。揺れもほとんど感じられなかった。思った以上に快適だった。

 機体は70年以上前のものなのに、内装が最新な感じがして古くは見えなかった。操縦もタブレットを指で動かすだけように見えた。

「上原さん、聞いてもいいですか」

「何ですか。僕にわかることなら何でも答えますよ。オトーターたちだと話ができないでしょ」

 オトーターとは?と、疑問を抱きながらも、今は重要部分から聞くことにした。

「セカイって何ですか?」

「やっぱり、わからないですよね。僕もこの前、知ったばかりなんで」


 少し、静かになった。


「もうすぐ着きますよ」

 回天は、その言葉通り、1分もしないうちに止まった。上原さんは糸数の地下だと言った。私には地理的な知識がないため、一応地名ぐらいは憶えておくけど、基本的には地名を言われたからとて、ピンとこない。

「暗いから足下、気を付けてくださいね」 

 上原さんは、心配りはしてくれるが、すたすた足早に歩いて行った。私も必死に歩いた。

 突然、上原さんが止まった。私も止まった。


「あれが、セカイですよ」


 私の目に映ったものは、ターミネーターの液体金属のような、スライムのような、意志を持ったマグマのような、何とも言い表せないモノだった。

「モンスターフロムアナザーディメンション」

 上原さんは独り言のように言った。誰かが訳したときに「異世界の怪物」となり、今は略されてセカイになった。と、教えてくれた。

 セカイは地下から地上に上がり大地を呑み込んでいく。昔の沖縄県は台湾と同じくらいの大きさだったけど、セカイに呑み込まれ今の大きさになり、今も呑み込まれ続けている。

 気が付くと、話していた上原さんは、セカイのほうへ向かい、上原さんが持っていたタブレットの音声がセカイのことを語っていた。

 私はタブレットを手に取りセカイのことを知った。

 歴史は、古く琉球王朝時代か続く(400年前)

 セカイは、地下から地上へ上がるとき、地上では地震が起きる。

 セカイは、この世界の生き物ではない。

 セカイは、エイトマンじゃなければ対処できない。

 セカイは、一つじゃない。

 セカイは、亡びない。


 セカイは亡びない。ちょっとだけの悲しくなった。

 胸の中に重たいものが落ちた。が、エイトマンじゃなければ対処できない。のところが気になった。


 また、疑問がわいた。エイトマンとは?


 

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