回天の回

 大城さんちんすこうをたべている。ゆっくり袋を開け、一つを自

分で食べ、もう一つを金城さんにあげた。

「セカイ?」

 私は大城さんを見つめた。大城さんはスマホで誰かを呼んだ。そして、またちんすこうを食べ始めた。さんぴん茶と書いてあるペットボトルには、見るからに違う飲み物が入っている。大城さんと金城さんは、無表情でそれをのんでいた。飲みながら、畑の話と持病の話をしていると、誰かが入ってきた。金城さんが誰かのほうを見ると大城さんがき気づいた。大城さんは、こっちっこっちと、ジェスチャーで誰かを呼んだ。

「紹介するよ。上原君」

 簡単な紹介だった。上原君は私より年下のように見えるのだが、、実年齢がわかりにくい感じがした。とりあえず上原さんと呼ぶことにした。


 私と、上原さんは改札を抜け、さらに地下に降りた。

 地下には川が流れていて、カヌーのようなものが浮かんでいた。上原さんは真面目な顔をして日常のように言った。

「これに乗りますよ」

「これは?」

「回天です」

「回天って?」

「魚雷です」


 死ぬじゃん。


 玉砕する奴じゃないの?特攻的な乗り物じゃないの?私は昔何かの本で読んだこと

 を思い出した。

 一度乗ったら、最後。戻ってくることができない乗り物。、大日本帝国時代の神風と並ぶ玉砕兵器。

「上原君、本物?」

「はい。本物です。なぜかたくさんあるんですよ。南部の地下には」

「・・・へぇ。(声にならない声が出る)」

「でも大丈夫ですよ。僕が全部、移動用の乗り物に直してありますから。一人乗りを二人乗りにしたりとか。直進しかできないところを舵がとれるようにしているし、何よりモーターで動くようにしてあるから静かです」

 急に嬉しそうに、饒舌も話し出した上原さんは、金城さんとは違う「怖さ」があった。

 私たちは、回天に乗って、ハクギンドウを出発した。

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