第2話

「美希(みき)、今日も宿題写させて!」

 クラスメイトの言葉に、美希はとびきりの笑顔で頷いた。

「勿論!」

「良かったぁ、ありがとう」

「美希、私にも、私にも」

 美希のもとに集まるクラスメイト達を見て、美希はにっこりと笑う。

(良かったぁ、この中学でも友達が沢山できて)

 美希は思った。

 中学二年生から転校してきた狭山 美希は、言わば比例女子。

 比例のグラフでは、横軸の数字が増すにつれて縦軸の数字が増加する。

 宿題を真面目にやって来てクラスメイト達に写させてやる美希の周りには、常に人だかりができる。そして、美希は友達が多ければ多いほど、毎日が楽しくて堪らない。

 つまり……美希にとっては横軸に友人の数、縦軸に一日の過ごしやすさをプロットすると、比例の直線を描くのだ。


『ガラッ……』

 ドアが開く音がして、入って来る男子に視線が集中した。

(磯原……君?)

 時が止まる教室の真ん中で美希は思う。

 クラス内で誰とも話さず、いつも一人の男子。美希がこの中学に入った時からそうだった。

(どうして……友達をつくろうとしないんだろう?)

 美希は不思議でたまらなかった。

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