連立方程式
いっき
第1話
教室に入ろうとした瞬間にクラスメイト達の笑い声が耳に纏い付き、磯原 隼人(はやと)は溜息を吐いた。
彼は、誰とも関わりたくない。
人との関わりが億劫なのだ。
ガラッとドアを開ける音と共に教室に足を踏み入れた瞬間、先程まで教室内を賑やかしていた生徒の笑い声やフザけ声は止み、全ての視線は隼人に集中した。
隼人は舌打ちをしそうになる。
(だから、嫌なんだ……)
誰とも一言も交わさずに窓際の席に着くと、教室内の賑わいは再開された。
隼人はぼんやりと窓から外を眺める。もうそろそろゴールデンウィークとなるその季節、桜の花弁は全て散り、青々とした葉に様変わりしていた。
(僕は……反比例男子だな)
そんなことを考えて溜息を吐いた。
隼人は中学二年生。最近、数学で『反比例』について習った。
反比例のグラフでは、横軸の数字が増すにつれて縦軸の数字が減少する。
隼人は友人の数が増えれば増えるほど、教室内で過ごす時間を苦痛に感じる。つまり……隼人にとっては、横軸に友人の数、縦軸に一日の過ごしやすさをプロットすると、綺麗な反比例の曲線を描く。
(友達なんて、少なければ少ないほどいい。そう、いなくても……その方が楽なんだから)
そう、感じているのだ。
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