第2話 12月25日

『ピピピピッ、ピピピピッ』


 メールの受信音に目が覚めてケータイを見ると、12月25日17:38。

「うそ……もう5時?」

 どうやら私は長い間、眠っていたみたいだ。

 私はケータイを開き、メールの内容を確認した。送り主は、昨日の倉田というキモオヤジだった。

『霞ちゃん、メリークリスマス!

昨日は本当にありがとう。僕、とっても楽しかった。

僕、霞ちゃんのためにクリスマスプレゼントを用意したんだ。

今日も、会えないかなぁ?』

「あのオヤジ、また性懲りもなく……」

 私は溜息をついた。

 キモい、キモい、あーキモい。でも、私にとってはいい金ヅルだ。

 私は不敵にほくそ笑んだ。


『まぁ、ありがとう! 嬉しいわ! 今すぐ、会いましょう』

 すぐに返事のメールをうち、机の上の日めくりカレンダーを一つめくってマンションを出た。

 昨日のことなんて、嘘のよう。きっと、疲れすぎて悪い夢を見たんだ。

 私はキャピキャピルンルンと待ち合わせ場所へ向かった。


「プレゼントって、これ……」

 私の背筋は凍りつき、顔が一瞬強張った。

 それは、白いワンピース。ダッサい、ダッサい、私だったら買うはずもないワンピース。それも、私の記憶が正しければ、昨日の女……『私』が着ていた……

「そ、そうなんだ。こ、このワンピース、絶対に霞ちゃんに似合うと思って……」

 オヤジは得意そうな照れた顔をした。

「…………」

 私は無言でそれを見た。

 どういうこと? このオヤジ……何で、こんなのをプレゼントするの?

 私の全身から血の気が引いてゆくのを感じた。

「も、もしかして……お気に召さなかった?」

 オヤジの顔に不安の色が映ると、私はふと我に返った。

「い、いいえ。倉田さん、ありがとう」

 私は無理やりに、辛うじて笑顔を作った。

「も、もし、気に入らないのなら……他にもプレゼント買いに行こう」

「ホント!? そこのデパートに新しくできた宝石店があるの」

 私はその白いワンピースをトートバッグにしまった。




「あぁもう、今日もキモかった」

 ダイヤ、サファイヤ、ルビー……煌びやかな宝石を手に入れながらも私は呟いた。

 今日もあのオヤジ、私の体を求めてきた。勿論、指一本触れさせるワケもなかったのだが。

 今日も当たり前のように全財産を奪ってやって、笑顔で別れた。

「それにしても、このワンピース……どういうこと?」

 トートバックの中のそれを見て、眉をひそめた。気味が悪いこと、この上なかった。

 私は帰り道の、人っ子一人いない不気味な公園に差し掛かった。

 その公園には、入り口付近にゴミ箱がある。私はふと、思い立った。

「こんなの、捨ててやれ!」

 そうだ、捨ててやればこんなの、私と何の関わりもないんだ。

 私は公園に入った。

 その瞬間!

「んー!」

 私は、背後から口を塞がれた。

 えっ? 何?

「うひょー、可愛い!」

「上物だな、上物」

 男……五人はいる。

 え、ちょっと……やだ。

 私は力の限りもがいたが……男五人の力に敵うはずはない。

 そいつらに押さえ込まれ、強引にトイレへ連れ込まれた。



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