2章 宿縁 第1話 少女の名前

 俺が再びその女と出会ったのはコンパの事であった。


 しかも、コンパといえば聞こえがいいが、自分だけ彼女が出来て、付き合いの悪くなった和巳が、何を思ったのか俺に紹介したい女の子がいるということで、幼馴染みで明るい王貴と王貴の彼女でやはり明るい冴子ちゃんを誘ってカラオケで合コンという話になったのだ。


 狐につままれたような違和感も感じないが、和巳の彼女の通うA女子大学附属高校は親しみやすいのに、優しくおもいやりにあふれた美人もしくは可愛い女の子が多い高校で、近隣の高校はおろか地域住民からも愛されている…つまり、怪しかろうが、この話を断れる男なんてまずいないのだ。


 現に王貴が、冴子ちゃんから耳をひっぱれて叱られたあげく、和巳の彼女の佐織ちゃんに言いつけてやると冴子ちゃんにあっかんべーをされていた。


 けど、俺も和巳も軽いくせに、考え方は重みもある冴子ちゃんをかばったことで、いじめられたこともある王貴のことを誰よりも理解しているのは冴子ちゃんだし、この夏だって、地域高校合同のホームステイ体験に体験するかで迷っていた冴子ちゃんの背中をおしたのが王貴であることは知っているから笑って見ていた。


 ちなみに、和巳の彼女の佐織ちゃんとはこの時に冴子ちゃんが、親しくなっており、ショートカットの佐織ちゃんは一見、さばさばとしており、人に気を使わずに、人を心地よくさせる才能のある女性で、冴子ちゃんが師匠と呼び始めたそうだ。

 

何しろ、冴子ちゃんは俺たち3人とつるんでいることが多かったし、両思いの王貴に対するさっきの態度からしてもいまいち女の子らしさにかけるきらいがあるのだ。


 ここからは少し俺たちの関係の少しややこしい所だが、和巳も冴子ちゃんのことをずっと好きであり、冴子ちゃんの変わらない思いを知って友人として2人を見守ってきた。


 ところが、冴子ちゃんが佐織ちゃんと親しくなってA女子大学の国際学科の英語学科へ進学したいといった夢に和巳が反応し、最初佐織ちゃんと喧嘩しにいったのが、恋の始まりとはキューピッドも面白いこともするもんだと思ったものだ。


 ちなみに、今まで緊張を隠し他人事を演じてきたが、佐織ちゃんが、女の子同士でつるむのが苦手な冴子ちゃんに紹介したのが、これから会う沢渡紗南という少女だという。


 肩まである長い髪をポニーテールに束ねたA女子大学人間関係学科心理学科に進路希望をだしている明るくて元気な可愛い女性で、人の心を読むのが上手く、俺とは結構お似合いかも知れないと冴子ちゃんは嬉しくなることをいっていた。


 ちなみに俺たちの方の進路は王貴は海外青年協力隊に興味があり、英語を学べる国立志望、和巳はコネのある私学の経済か政治で将来の人脈作り、俺はお袋の願い通り福祉学科へ進学するか社会にでて役に立つ実学を学ぶかまだ迷っていた。


てなことを考えながら歩いていたら、既に店の前を通り越してて、3人が俺の名を呼びながら笑っていた。

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