第3話 やっぱりコイツは詐欺師だ!
「ほらほら、どうする?」
Tシャツの裾をヒラヒラさせて、ニヤニヤしながら俺に問いかける雨宮。
「そ、そそそ、それはさすがに……」
揺れるTシャツの裾を凝視しながらも、俺はなんとか否定の言葉を紡いだ。こんな欲望に負ける形で、簡単に同居を許すことなんてできないだろう。
「あー、手が疲れてきちゃったー」
そう言いながらスルスルと下がっていく裾。俺は思わず「ああ!」と声をあげてしまう。その声を聞いて、さらにさらに口角をあげる雨宮。
俺はいまだかつて、女の子のこんなあくどい顔を見たことがない。かわいい顔をした悪魔だ。
だって女の子のパンツなんて、生まれてこの方、雑誌以外では一度も見たことがないんだから仕方ないじゃない。
それもこんな美少女のパンツなんて、この機会を逃したら一生拝めないかもしれなんだぞ……。
「う、うぐぐぐぐぐぐぐ……」
し、しかし、やっぱり初対面の女の子と同棲なんて……。
それにここの管理人さんは、俺の親とも知り合いなんだ。もしも年齢イコール彼女いない歴の俺が女の子と同居していて、しかもそれが女子高生だってバレてしまえば、あのどこか抜けてる両親じゃ何をするか分かったものではない。
よし、やっぱりここは断ろう。
俺は強い子、性欲になんか負けないぞ!
「あ、そういえば、今日は勝負下着だったっけ。えっちいやつ」
「今日からここが貴女の家です!」
「やったー! ありがとう、ハイタツくん! 大好き!」
そう言いながら、俺に飛びついてくる雨宮。そのまま俺の首元に顔を埋め、大きく息を吸ってから、気持ちよさそうにゆっくりと吐きだした。深呼吸と一緒に上下する柔らかい部分が、俺のお腹に当たって形を変えているのが分かる。
こ、これ、これは、ダメだ。これの正体は考えちゃいけない。ドントシンク、オーケー。オーライ。
というか、性欲に負けてオーケーしてしまったじゃん……。
でもしょうがないよね。美少女のえっちい勝負下着ですよ。こんなの
「あはは、ごめんね。ちょっと興奮しちゃった」
パッと離れて、手を合わせて『ごめんねポーズ』をしつつ、舌を出す雨宮。なんとも表情が豊かで、見ているだけでも楽しくなる。
しかし、今はそんなことよりも――。
「こ、興奮だって!?」
「いや、そういう意味じゃないんだけど……」
俺がそういう意味で興奮していたためか、変なところに反応してしまった。
そんな俺をお手本のようなジト目で眺める雨宮。美少女のジト目って、とても心に深く刺さるんだね。トレビアの泉に投稿しようかな。
「そ、それより、雨宮さん。そのぉ~」
我ながら情けないと思いつつも、おねだりをするような声を出して、雨宮のTシャツの裾を凝視してしまう。
俺は……パンツが見たい! 雨宮のえっちいパンツが!
だけど「君のえっちいパンツが見たいんだ!」と正直に言う訳にもいかず、どうしようかと口ごもってしまう。
で、でも、俺は住むことを許したわけだし、パンツを見る権利があると思うんだ。そう、これは下心ではなく、契約の履行というヤツだよ。
そんな風に独り言をブツブツ言っている俺を見て、雨宮はポンと手を打った。
「ああ、ごめんねハイタツくん。これが見たいんだよね?」
そう言いながら、俺に飛びつくときに手を離した結果、膝まで戻ってしまっていた裾を再度握りなおす。
そして先ほどの再現のように、スルスルと裾が足を駆け上がっていき、ギリギリのタイミングでピタリと止まった。
「あはは、そんな食い入るように見ちゃって。ちょっと恥ずかしいよ?」
頬をほんのりと桃色に染めながら、拗ねたような声音で話す雨宮。
そんな彼女も可愛かったが、俺はもうそれどころではない。肌色と黒色の領土争いに夢中で、他のことを気にする余裕なんてとっくに無くなってしまっていた。
男はパンチラの前では皆、無力なのだ。
「もう、ほんとえっちなんだから」
しょうがないなぁと言った感じで溜息を吐くと、雨宮はグッと裾を握る手に力を入れた。
「どうぞ、召し上がれ」
たっぷりと一呼吸の間を置き、恥ずかしそうにそんな甘美なセリフを言うと……雨宮は一気に綺麗なお
握れば折れてしまいそうなほどに細い足首から、スラリと健康的に伸びる生足。それから細いのにもっちりとした印象を与える美しい太ももときて、その先にある足の付け根……そこには大事なトコロを隠す、最後にして最強のデニム生地の砦が……ってデニム?
「ごめんね、今日はショートパンツはいてるんだ」
顔を上に向けると、Tシャツをたくし上げた状態のまま、片目を瞑って舌を出している美少女。ごめんねと言いつつ、その顔は完全に「してやったり」と言っていた。
な、な、なな。
「なんじゃそらああああああああああああああああ」
やっぱりコイツは詐欺師だ!
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