路面電車
紫鳥コウ
路面電車
一匹の蝶が路面電車の天井にはりついている。
開け放たれた窓から桜の花びらを乗せて流れていく、春の吐息のような風が、まどろんでいる蝶の翅を、こそばゆくゆらしているのだ。
うららかな陽に明るく照りかえされた、桜並木。
路面電車は、うっとりと、ゆっくり、ゆっくり、桜並木を抜けていく。
その小さな
乗客は、ほかにだれもいない。
桜の花びらが、また、いろづいた風の香りに乗って運ばれてくる。
蝶の心を
少女もまた、母の手のぬくもりに、こころをなでられて、そのこそばゆさにあまえていた。その母もまた、春のこもりうたをきいて……。
路面電車は、春のひかりのたもと。
桜並木を、向こうに、向こうに、消えていく。
路面電車 紫鳥コウ @Smilitary
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