第8話
暁烏さん以外の名前を知ることができたのは“歓迎会”が終わってからだった。
眼鏡をかけて真面目な顔をしてるのが菊紋聻四季浪<きくもんじしきろう>さん。
一応ここの副長をしてるらしい。
そして長い黒髪が似合うスタイル抜群の女の人が兼崎澪<かねさきねお>さん。
思わず胸に目が行ってしまう。
最後の一人は暁烏さんにちょっかいを出されていた人だ。
「えっと…くるばななぎです。女です。」
「えーーーーー?!凪?しかも女?!」
確かにオレンジ色の髪は変わらず少しツンとした表情もそのままだ。
だがその体はどこか柔らかそうだった。
「もしかして朱狼?」
凪は驚いてる俺を見て気が付いたようだ。
「ああ……」
「なになにー二人って幼馴染なのー?いいなー」
暁烏さんはもうダメだ。酔って使い物にもならない。
「まあ、そうですが」
「そっかーじゃあそんな二人に朗報―!」
「なんですか」
「ついてきてー」
ビール瓶片手に千鳥足で歩く暁烏さんについていくと階段を上って二階に案内された。どこに連れていかれるのかと思っていると一つのドアが開けられた。
「ここ、ここ」
「なにが?」
「君たちの部屋」
「はーーーーーーーーー?」
「あ・い・べ・やだヨ!」
『あ・い・べ・やだヨ!』じゃねえよ本当になにこれ拷問?いやほんとにないから無理だから。
「いいじゃなーい二人とも幼馴染なんでしょ?定番の展開なんじゃない?」
一階から兼崎さんが大声ではやし立ててくる。ないない、てかそんなんじゃないからね。
こんな時に助けて菊紋聻さーーん
・・・・・・。
もういない。
「ひゅーひゅー」
お願いだから兼崎さん黙っててくれ。
「でもなーこれ以外部屋ないし…まあ後はお若い二人で」
「ちょちょっと……」
あっけなく部屋に閉じ込められた。凪と二人で。
準備よく二段ベッドも用意してあるしデスクもちゃんと二つある。
最初から分かっていたならもう少しどうにかならなかっただろうか。俺よりも凪がかわいそうだ。
「な、凪……」
「朱狼…僕に変なことしようとしたらコロスからネ。じゃこれからよろしくってことで、おやすみ」
性格悪化してるよ。前言撤回、可哀そうなのはオレ。
その日俺は寝つきが悪かった。それは凪も然り。
The Wisdom Of God うーにー @shinnosuke0203
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