第5話

「おおー」



中に入って出た第一声がこれだった。これはネガティブな「おおー」ではない。ただこういう場合の言葉を用意できていなかったのだ。


「どう?綺麗でしょ?」


「確かに」


 一階には会議用の大きな机とホワイトボードが置かれていて奥にはキッチンも見える。さらには二階もあるらしい。


外観からは想像もできないくらい快適そうだ。外観と比べればにとどまるが。


「まだ誰も来てないみたいだからてきとーに見てていいよ」


そう言って班長は階段を上がっていった。


 さて、一人一階に取り残された俺はどうしようか。適当に見てていいといわれたが人の家にいるみたいで落ち着かないしあちこち見まわる気にもなれなかった。


それで机の周りを歩き回っていたのも5分程。しばらくするとそれにも飽きてきて別の部屋も見てみようという気になった。


一階の奥には扉が縦に2つ並んでいた。そこで何にも考えずに扉を開けたのが運の尽き。


手近だった手前の扉を開いた時一瞬で女風呂だと分かった。なぜなら脱衣所には色とりどりの宝石たちが吊るされていたからだ。


「いや、俺は何も見てない。てか見えなかった。だから俺は無罪だ。うんうん」


誰にも見られていないのをいいことになかったことにしようとしたその時。


トントン…「朱狼くーん……」ニヤリ


真後ろから悪魔のささやきが聞こえた。

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