第8話 同級生

ある日のお昼休み、美海は校庭の鉄棒にまたがっていた。

箒は空を飛べても、美海が飛ぶわけではない。箒に乗っているだけだ。だから、両腕でしっかり体を支えて、またがらなければいけないと、先日箒に乗る練習をした時に、お姉さんが教えてくれた。

まさか魔法とは関係ないところでつまずくとは思ってもみなかった。


しかし、両手だけの力で体を支える事は、とても大変な事だった。

おしりの下にクッションを挟んで少しは痛みを無くす事が出来たが、体のバランスを取るためには、とにかく腕で支えなけれはならない。


「こればっかりは、魔法でどうか出来るものでも無いから、少しづつ慣れるしか無いわね。」


お姉さんは、美海ががっかりしない様に励ましてくれますが、出来ない事を簡単に納得する事など出来なかった。

せっかく箒で浮く様になったのだから、早く飛びたくて仕方が無かった。

その為には、少しでも練習しなければと思い、鉄棒にまたがる事を思いついたのだった。

そんな美海を見て、同級生が声をかけて来るが、鉄棒の練習をしていると言ってごまかしました。

お姉さんには、魔女の練習をしている事を誰かに言ってはいけない、とは言われていなかった。

それでも、きっとダメなんだろうと思い込んでいた。


そんな練習を初めてから1週間が過ぎた日の放課後。

美海は、委員会があって帰るのが少し遅くなってしまった。

教室に体操着を忘れた事を思い出し取りに戻った。

今週、お姉さんは用事があると言い家を空けていたが、今日帰って来る予定だった。


早く練習の成果を見てもらいたいのに、こんな日に限って何で帰るのが遅くなってしまったのか。恨めしく思いながら教室の扉を開けると、美海の席に女の子が座っていた。


「美海ちゃん。」


女の子は振り返って美海の名前を呼んだ。

そこにいたのは、隣のクラスの木村郁美だった。

彼女とは、1年生の時に同じクラスだったが、それ以来別のクラスで特に親しいわけではなかった。

郁美は美海の横にゆっくり歩いてきた。


「ずっと握っていると、直ぐに握力が無くなって長く続かないよ。普段は体重を後ろにかけて、力を抜くの。それで、バランスが崩れた時とか、方向転換する時だけ前屈みになって、強く握るの。」


郁美が何の話をしているか直ぐに理解できた。

でも、それに対して何と返事をして良いのかわからない。


「箒に乗る練習してるんでしょ?」


そんな美海の考えを見透かした様に、郁美が笑いながら続ける。


「私も魔女なんだ。よろしくね。」

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