第7話 ほうきで飛ぶのは難しい②

鉛筆に動いてもらう練習を初めてから、1ヶ月が経った。

今では美海の思った通り前後に動かして、お姉さんの様に立たせる事も出来る。

しかし、どうしても浮かせる事が出来なかった。

その事をお姉さんに相談すると、動かす事と浮かせる事は、コツが違うのだと教えてくれた。


「鉛筆を浮かせる時はね、自分の手の続きに鉛筆がくっついている感覚で動かすのよ。」


鉛筆にお願いをして動かしているのに、自分の体とくっついているとは、どう言う事なのだろうか。美海には考えても良く分からなかった。


「美海ちゃんは空気を触れる様になったでしょ?そのやり方を、鉛筆に教えてあげればいいのよ。」


そう言うと、お姉さんは指先を鉛筆の上に軽く置き、腕を上げました。すると、指にくっついた様に鉛筆も持ち上がった。


「こうやって鉛筆と一緒に空気を触る練習をしてみて?そうすれば、手を離ししても鉛筆に空気の触り方を教えてげられる様になるから。」


お姉さんはいつもの様にニコニコしながら簡単そうにやっているが、鉛筆を動かすだけで精一杯の美海には、まだまだ長い道のりの様だった。


「因みに、物を通して空気を触って飛べるって事は、こんな風に両手で空気を掴めば道具がなくても飛べるのよ。」


お姉さんは、はしごを登る時の様に手足をうごかした。

すると、その動きに合わせて体が浮いていった。


「すごい!!じゃあ道具を使わないで、その練習をすれば飛べるね!!」


美海が興奮しながら、お姉さんに言いった。


「美海ちゃんがそれで良いなら良いけど、これとっても格好悪いわよ?」


お姉さんが苦笑しながら言いった。


「そうだね。」


美海もつられて笑いった。


それからまた、1ヶ月が経った。

初めてお姉さんに会ってから3ヶ月が過ぎていた。

寒かった冬も終わりかけて来た。

美海は、手を離したところから鉛筆を浮かせる事が出来る様になっていた。


「もう鉛筆を浮かせるのは完璧ね。」


お姉さんが嬉しそうに褒めてくれた。

普段人から褒められる事に慣れていない美海嬉しさと恥ずかしさで、どんな表情をすれば良いかわからなかった。


「この先どうしましょうか?鉛筆の大きさじゃ、美海ちゃんを載せて浮く事は出来ないし。何か、普段使っている物で、美海ちゃんが乗れそうな物ってある?」


美海はこの質問をされるのを、ずっと待っていた。


「ちょっと待ってて。」


そう言うと、美海は急いで自分の部屋に行った。

戻って来た美海は竹箒を持っていた。


「あのね、お姉さんに箒で空を飛べないって言われた後、ママにお願いして、箒を買ってもらったの。それでね、私、それから毎日箒と一緒に寝てたの。学校に行く時と帰ってきた時は挨拶して、お家で遊ぶ時は、いつも一緒だったのよ。だから、凄く仲良くなれたと思うの。ダメかな?」


今まで箒なんて触った事の無い娘が、ホームセンターで箒をねだった時の母親の顔を想像して、お姉さんはクスリと笑った。

そして、箒をまじまじと見てうなずく。


「大丈夫だと思う。箒も美海ちゃんの事信頼してる。」


お姉さんの返事を聞いて、光明が刺すした事が凄く嬉かった。


「早速やってみるね。」


美海が直ぐに箒に跨る。


「初めてだから、あまり張り切っちゃだめよ。少しづつ浮いてね。」


お姉さんが優しく声をかける。

美海は、真剣な顔をして正面を向いた。

箒の下の方で空気を掴んで持ちげ様としているのが、指先に感じられた。

そして、美海の両足が少しだけ浮いた。


「やっ」


やったー、と言いかけて、美海は足を床に着けてしまった。

そして、泣きそうな顔でお姉さんを見上げる。


「お姉さん。おまたが凄く痛い。」

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