第6話 ほうきで飛ぶのは難しい①

翌日の放課後、美海はお姉さんから説明を受けていた。

美海母屋のテーブルで向かい合わせに座っていた。


「あのね、今日から箒で飛ぶ練習をするって言ったんだけど、ちょっと待ち合いがあって正確には箒に飛んでもらうのよ。」


美海には違いがわかりません。


「箒に飛んでもらって、その上に乗せてもらうの。そして、多分、美海ちゃんは箒では飛べないんじゃないかな。」


お姉さんが困った顔をしながら、机の上にある鉛筆を指差す。


「この鉛筆と庭にあるあの大きな石、どちらが飛ぶと思う?」


美海は考えながら、鉛筆を指差した。


「実はね、どっちも同じくらい跳んでくれるのよ。み美海ちゃんもクラスのお友達も自分の力でジャンプできるでしょ?それと同じように、大きさとか重さは飛ぶ事には関係無いの。」


「じゃあ、何が関係あるの?」


「それはね、飛んで貰う物と私達の関係よ。仲の良い物の方が、自分の思った通りに動いてくれるの。昔の人は生活の中で箒を使ってたけど、美海ちゃんは使わないでしょ?ママならもかしたら、掃除機で飛べるかも知れないわね。」


お姉さんはガッカリさせない様に冗談を言いますが

、美海は箒で空を飛ぶ事は出来ないのかと、暗い顔をした。


「だからね、美海ちゃんが何で空を飛ぶかは後で考えるとして、今は物に飛んでもらう練習をしましょ。」


飛ぶこと自体が出来なくなったわけでないと気持ちを切り替えて頷いた。


お姉さんに使い慣れている物を持ってくる様に言われて、学校の筆箱を持ってきた。


「まず、普段使っている鉛筆に動いてもらいます。」


そう言ったお姉さんは、机に置いていある鉛筆に手の先を向けて、指を上下に動かした。

すると、鉛筆は手前や奥に転がり、最後に立ち上がった。


「命令するんじゃなくて、お願いするの。やってみて。」


お姉さんがニコッと笑って、美海に言う。やっていた通りに、普段使っている鉛筆をテーブルに置いて、手を向け、心の内でお願いをする。

何度も何度も手を伸ばし指を動かす。

始めは全く動かなかった鉛筆が、1時間後、少しだけ自分の方に動いた。


「上手よ。あとはもっと自分の声が相手に聞こえる様に色々試してみて。」

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