第16話 声

「イマハラアイライノ、レテホレル?」

異国語のように聞こえた、まるでロレツの回っていない声。

時計を見ると、十時半を回っていた。

休日前の夜は、普段ならば二人して食事している筈なのに。


「今夜だけはごめんね」

と、手を合わせた minako。

訳を聞くと、すまなさそうに苦し気な表情を見せた minako。


minako が指定した場所に行くと、女子高生らしき娘どもが、地べた座りしている。

「あぁいうのって、嫌ね」

なんて言ってる minako が、タクシーから降りるやいなや飛びかかってきた。


酒臭い息が。体の中に入り込んできた。

何度か引き離そうとしたけれど、がっちりと首に回された手がほどけない。


“こんなに、力、強かったっけ?”

それとも、本気で引き離す気がなかった?


23歳の、minako。

お姉さんの、minako。

看護婦の、minako。

くりくり目の、minako。

少し団子っ鼻の、minako。

おちょぼ口の、minako。

可愛い、minako。

俺だけの、minako。

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