第15話 諍

新一を抹殺する━それを願う己と、それを阻止する己とが。

まるで神と悪魔の代理戦争の如くに思えていた。

そしてそのことに、どれ程の時と労力を費やしたことか。

それが今、それら全てが心の外側に位置している。

今は、踏みしめている大地に頬ずりする衝動に駆られている。

この一瞬間の歓びを表したい。


そしてそのまま跪き、イスラムの祈りのように、大地に接吻したい。

ひんやりと湿った土から与えられるもの、そうだ。

この匂いは、この香りは。

お袋が毎朝作ってくれていた、味噌汁の香りだ。

大きな背におぶさわれた折の、親父の汗の匂いだ。


先夜の、恋人との諍い。

行き違い。

ねっとりとした熱い空気が体にまとわりついた夜のこと。

不快指数100%だったあの夜のこと。

minako からの電話。

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