第5話 スライム(素材)がほしい
「うーん……作るなら夏のうちに作り溜めしときたいけど……スライムかぁ」
そう、主な素材はスライム。弱い魔物だ。
生きているものは魔物のくせに浄化・分解の力を持ってたりする。性質の良い子を見つけて工房で仕事をしてもらえたらなぁと前から思っているのだけど、
さて、
大量のスライムに薬草を混ぜ、煮詰め溶かしたら木枠に流し込む。枠を外しても形は保つので、あとは崩さないように注意して乾燥させる。
天日で干してもいいし、私のように火の精霊と契約してる者は、精霊にお願いして乾燥させてしまうことが多い。
私向きの作業なのだけど、問題はその素材採取だ。
スライムが沢山必要なので群生地に行きたい。この近くだと迷宮の水場が良いのだけど……一人では難しいだろう。
一匹や二匹なら私でも問題ないが、スライムとは言え見習い錬金術師が一人で挑むには危険すぎる。それに場所も浅いとはいえ迷宮だ。他の魔物に出会ってしまうかもしれない。
「……
でも依頼料……高いよね?
いや、私自身の修行も兼ねてるから作るのが正当なんだけど……。
「う〜ん、お金がなぁ」
ちなみに、この
工房にある状態保持の食料保管庫は中級の効果。経過時間を大幅に遅らせる。ちなみに床下がストック用で普段は床置きの保管庫を使っている。
効果はせいぜい数日〜一週間なのだけど、遠出の採取や迷宮に行くことがあれば重宝しそうだ。
そんなことを考えながら全てを包み終えると私は素材保管庫へ。隣の薬種保管庫ばかりが充実していたが、これで素材もしばらくは心配ない。
「あ、そっか。薬類も売りに出さないとか」
うっかりしていた。
今までは先生が錬金術研究院を通して適切に処理(見習い作なので、同じく見習いの騎士用にされたり、格安で卸されたりしている)してくれていたのだが、これからは自分で何とかしなくてはならない。
調合練習は必要だから薬は溜まっていくだろうし、でも使用期限もある。
今まで通り研究院に渡しても良いけど……いや、駄目だ。
「薬なんてお金を稼ぐのに丁度良いじゃない……!」
工房で一人で暮らすんだ。素材だって器具の維持だって、それに私の生活だってタダじゃない! パンを買うにはお金が必要だ。
今朝気付いたじゃないか! ……ちょっと遅かったけど。
うん、ほんとちょっと一人暮らしに浮かれすぎてたわ……自分の迂闊さに呆れる……。
それはそうと、売るなら街の方が良い。
研究院に卸してしまうと代金は素材で返還されてしまうからだ。
素材は工房の森で集まるし、森に無いものが必要になれば研究院で買えば良い。見習いだろうと錬金術師の肩書きがあれば三割引が効く。更に研究用と認められれば驚きの五割引!
街で売るなら工房名義の、ヴェネトス商業ギルドの『銅色許可証』がある。売却に問題はないはずだ。
それにこれがあれば十日に一度開かれる自由市場に出店が可能だ。工房実習で年に数回、素材や薬を売ったことがある。
それからギルドを通してのお仕事や売買も可能で、手数料が割引になるらしい。
ちなみに『銀色』があれば店を開けるし、『金色』になれば商隊を組んだり、街々を股にかけての広い商いが可能となる。
「う〜〜ん……
採狩人ギルド――街の外で採取をしたり、魔物や動物を狩ったりする人々をまとめて採狩人と呼ぶ。
個人でできる採取依頼なんかはギルドにたくさん出ているので、確実で堅実な収入を得るのに良いかもしれない。
ちなみにこちらにも等級はあって、受ける事の出来る依頼の難易度に応じ『銅色採狩人』『銀色』『金色』、更に『白金』となっている。
城壁外は基本的に人の領域ではなく、自然――魔物や精霊と共存している場となるので危険と隣り合わせだ。
そんな安全圏ではないところでの活動になるので、採狩人ギルドには腕っ節の強い者が多い。
狩採人と言えばやっぱり
ヴェネトス周辺にも一ヶ所あるのだが、特に魔物や魔素が集まったと呼ばれる特殊な狩り場だ。色々なタイプがあるらしいが、内部はその名の通り『迷宮』のようだそう。普通の狩採場とは危険度が段違いで、ヴェネトスの迷宮は未だ未踏破だという。
「スライム採り行きたいな〜〜」
スライムは浅い階層に群生してるが、他にも珍しい素材も多く採れるので是非一度行ってみたい。それに魔素が濃いせいか素材の品質も高いらしいのだ。
私レベルの体力・戦闘力ではまず難しいだろうから、お金を作って護衛をお願いして、是非採取に行きたい。
「でもまぁ、魔物素材以外なら工房の森で十分なんだよね」
私のレベルではまだまだ珍しく素材を使うような物は作ることができない。チャレンジはするけど良くて低品質の物が出来るだけで素材に申し訳ない。
早くもっと色々作れるようにならなければ。
私の唯一の特技、暗記によってたくさんの『レシピ』を記憶しているが、『レシピ』は分かっていてもどうしてか作れない物が存在する。
その理由は実力不足。
自身の魔力や、単純に経験不足で技量が足りていないと『レシピ』は用を成さないのだ。
だから今の私は結構な宝の持ち腐れ。『レシピ』に関しては、試験に合格しそろそろ錬金術師となるだろう同期よりも豊富なのだから。
「
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