第4話 採取へ行こう!②
まずは第一食材確保!
ピチピチと跳ねる
笹芭蕉は殺菌効果があるので普段から食材を包むのに使う。野営の時にはお皿代わりにしたり、蒸し焼き料理にも使える便利な葉っぱだ。
勿論これも錬金術の素材になる。主に傷薬や火傷の薬に用いるが、手に入れやすい素材だけあって薬効は弱い。
ちなみに笹芭蕉は竹の仲間だ。芭蕉と付いているが芭蕉の仲間ではない。単に『大きな葉っぱ』の意味で芭蕉と付いているらしい。
食べることの出来る実がなる芭蕉はもっと暖かい地方に生えているそうで、この辺りでは見かけない。
さて。ローブを羽織って先へ進もう。
そろそろ森の中心あたり――。
「あっ」
タワーだ。
森の中にぽっかり空いた空間にそれはあった。
タワーの近くに寄ってみると高さは三メトル程。細く白い幹が蔦のように絡み編み上げられ、塔になっている。
上部で枝と葉は屋根のように広がっており、その木陰は清涼な空気で満たされていた。
「ここ、先生が置いてくれた守護の要だ……」
そっと幹に手を添えると、フワッとまるで雪虫のように淡い薄緑の光が舞った。
ああ、私はまだ
「お護り感謝します。よろしくお願いします」
感謝と祈りをこめて、そう呟いた。
◆
初夏って本当にイイ! 素晴らしい! ありがとう森の恵み!!!!!
「夏菊草に芽玉菜、彩人参……
ここは天然の畑か!? と思うほどの種類だ。これもきっと、私をここに残したイリーナ先生が施してくれた守護のおかげだと思う。それに加え、この前の嵐の良い影響でもあるのだろう。
イリーナ先生は大地の精霊の加護が強い。何度かその姿を見た事があるけど、
先生の精霊は、荒ぶる自然である嵐の力を守護の力へと変換し、そして森へと還元したのだと思う。
「すごいなぁ……」
野菜の間に生えている豊作の
体力を回復させるポーションに必要な日輪草、病気の回復を助ける月読草、怪我に使う不忍草は泉に生える水草なので、袖をまくって採取する。そうそう、笹芭蕉の葉も忘れずに採って魚を包んだ。
そうして、いくつかの木ノ実と花も採取すると、籠はもういっぱいだ。
ああ、大量だけど勿論、採り尽くしたりなんてしない。
私は森と精霊に感謝し、ずっしり重くなった籠を腰から肩掛けに持ち替え帰路に着くことにした。
工房に戻ったら早速、採取した素材の下処理だ。
まずは丁寧に水洗い。
小川から引いた水は一度タンクに貯められ、外にある水場と工房内の水場――台所と錬成調合用の二ヶ所に分水されている。ポンプ式ではなく蛇口を捻るだけなので、作業しながらでもとても使いやすい。
街中や郊外の村ではこうはいかないだろう。良くてポンプ式の井戸、悪ければ川へ水汲みに行かなくてはならない。
野菜のいくつかは泥つきのまま笹芭蕉で包んで保存庫へ仕舞う。魚は素材になる部分の鱗だけ取ってあとは一旦保管庫へ。これは今日の晩御飯にするからあとで内臓の処理をしなければ。
野菜は保存食に出来そうなものは後で加工することにして……一株そのまま持って来た
とりあえず今回はお試しで……うまく根付きそうだったらそれで良いし、厳しそうだったら今度他の野菜と合わせて種か苗を買ってこよう。
その他、素材となるものについては全て水洗いだ。
あ、水草である不忍草だけは、屑魔石と水を入れた大きな瓶で保管しなくては。これは足が速いので、水に浸けておかないと翌日にはダメになってしまうのだ。
全てを洗い終えたら乾燥させるものは水気を取って、そのまま使うものは
「あ、そっか
薄く半透明なそれは素材の保存には欠かせない。
私の上半身ほどの大きさの
僅かに弾力のあるそれは、柔らかい素材の保管にも向いている。乾燥を防ぎ長持ちさせることが主な使用目的なのだけど、そのお値段は二十枚一包で五百ルカ。(*バゲット一本が百五十〜二百ルカ)消耗品と考えるとちょっとお高い。
これも錬金術の産物なので私にも作れるけど、一人では素材がちょっと厄介なのだ。
「うーん……作るなら夏のうちに作り溜めしときたいけど……スライムかぁ」
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