第4話 どしゃ降りの雨
外はもう、どしゃぶりになっていた。
少年は悲しかった。
肩を叩く雨が、一層少年の心を重くしていた。
そしてその雨と共に頬をつたう涙も、止まることを知らなかった。
「ごめんなさい……」
と、消え入るような声が。
そしてそれが少年の耳に届いた時、二人の黒服によって外へと連れ出された。
少年の心に、後悔する気持ちが生まれていないことが救いだった。
といって、少女を責める気持ちもない。
心情を伝えられなかったことが、残念だった。
ただただ、残念だった。……残念だった。
“どうして分かってくれない!”
“どうして……なぜ……どうして……なぜ……”
と、突然に腹立たしさが込み上げてきた。
“なにを、伝えたかった?”
“誤解されたって?なにを?”
“頷いてくれれば、良かった?”
“話を、したかっただけなのに……”
雨の中で、ひとり泣き笑う少年。
今夜のために、この十日の間に準備したこと。
物理的なことではなく、シュミレートしたすべてがなんと虚しいことか。
周到に組み立てたことが、
ともすればうずくまってしまう弱い心を奮い立たせたことが、
すくんでしまった足に命じた脳からの指令が、
それら全てが……。
今、もろくも崩れ去っていく。
同世代から‘ニヒリスト’と揶揄されても、苦笑いを返しつづけた少年。
同世代の笑いの渦に溶け込めない少年。
パシリにすらされない拒絶、パシリにすら見られない虚しさ。
十年後、二十年後、同窓会において透明人間化する恐れ。
同世代との繋がりを求める少年、その術を持たない。
雲ひとつない真っ青な空を絵画にしようとする折の、
己の無力さを知った心ー絶望、そして生まれきた虚無。
救われることのない地獄への道を見た少年。
昨日までの毎日、そして明日からの毎日。
もがいてみた今日は、明日に繋がることがなかった。
得体の知れない魔物に魅入られてしまい、
その魔物からの脱出を試みもがいてみた末に、また同じ所に立ち戻ってしまった。
このまま、この雨になれないだろうか。
大水となり川を下り大海へ流れ込みたい、心底考えた少年。
天から下る雨、地を分かつ川となり大海へと旅する。
そしていつかまた天に上り、雨となって下る。
少年の目が、雨空の上にある太陽を捉えた。
そして太陽の上にある何かを睨み付け、そして涙した。
~~~・~~~・~~~・~~~
「あのね。砂利道というのは、平坦路の五割も早くタイヤをすり減らすんだって。どうして、こうしたモーテルなんかでは、砂利道にするのかな? やっぱり、客の出入りを知るためだろうか……?」
「ふふふ……怖いの? いいの、いいのよ。あたしだって初めての時は、変なものが気になったから。いろんなこと考えていたもの」
「い、いや! 違うよ、ぼくは。初めてだなんて、失礼だ!」
「いいって。言い訳なんかしちゃって、かわいいわ」
ブルーの住人 第2章 ブルー・れいでい としひろ @toshi-reiwa
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