【コミカライズ連載中】当て馬王子の侍女に転生!?よし、ヒロインと婚約破棄なんてさせません!~モブ令嬢のはずなのに、なんだか周囲が派手なんですが?~
第7話隣国で幸せエンドな騎士様は、破滅ルートなので却下です!
第7話隣国で幸せエンドな騎士様は、破滅ルートなので却下です!
自室の二段ベッドは、下段が私。
クッション代わりの枕に背を預けて座り、本を読むふりをしながら必死に記憶を遡らせる。
内容はもちろん、攻略対象であるダン・アンデリックについて。
緑の髪と目を持つ、ヴィセルフの幼馴染にして従者騎士である彼は、苦労屋ながら誰相手にも気さくな爽やか好青年だ。
が、ヴィセルフに害なす者が相手となると一変し、冷酷冷淡に。
魔力分類は緑。鋭い棘を持つ
本来ならば、高度な魔力を持つ者は十七歳になると、王都クラウン学園に通い始めるのだけれど……。
従者騎士であるダンは特例として、来年、ヴィセルフと共に入学することになっている。
(だからダンは、同級生だけど年上だったんだよねえ)
ヴィセルフの側近として、幼い頃から理不尽に耐えるエラを見てきたダン。
ぐっと距離の縮まった学園生活で、相も変わらず健気なエラの姿に心惹かれていき……。
そしてついに、エラが自身の不遇を嘆き悲しむどころか、自分の結婚によって少しでもダンの力になれたら……とダンの心に寄り添おうとしてくれたことで、その恋心を一層深めるのだ。
なぜならダンは、生まれながらの"従者騎士"。
様々な相手から「ヴィセルフをなんとかして欲しい」と言われ続けてきたけれど、「力になりたい」と言われるのは、初めてだったから。
忠義をとるか、愛をとるか。葛藤するダン。
このね、人当たりの良い爽やか好青年が苦悩するのがまた……! たまらないのだけど……!
ともかくダンは、とうとう心を決める。
『大切にしたいたった一人すら幸せにできない国なんて、守ったところで……!』
卒業式前夜のイベントでこのスチルが解放されれば、ダンルートの攻略成功確定。
翌日の卒業パーティーで婚約破棄イベントが発生すると、
『悪いな、ヴィセルフ。けど……俺は国よりも、王よりも……愛すべきただ一人のために、この命を捧げたいんだ!』
ヴィセルフに決闘を申し込むダン! そして見事に勝利! エラも感激!
二人は結婚し、めでたしめでたし――とはならず。
悲しいかな、反逆は反逆。ダンとエラは国外追放の処分を受けてしまう。
ところが事情を知った国王が二人を
ありがとう王様。グッジョブ王様。
自然に囲まれた小さな小屋で、慎ましやかながらも笑顔と愛に満ちた新生活。
そしてある日、エラは白の魔力を目覚めさせ、隣国の王によって『加護の青薔薇姫』としての称号を与えられる。
ダンもまた、エラを守る『花盾の騎士』の称号を受け、二人は新たなお屋敷で幸せに暮らすのだ。
このラストで解放される庭園のスチルがまた爽やかで……眩しいまでの幸せが満ち溢れていて!
プレイしていた時は布団にくるまりながら「よかったね……よかったね……」と涙したものだけど、今の私にとっては、心苦しい未来でしかない。
(たしかダンルートでのヴィセルフって、最大の裏切りを受けたー! とか言って、荒れ狂っちゃうんだよなあ)
おまけに国王が病床に伏せ、実質王権を手にしたヴィセルフはやりたい放題。
この国はあちこちで暴動が起きる、荒れ果てた国になってしまう。
(暴動とか無理無理……! ダンルートは絶対阻止しないと……!)
なのに! ヴィセルフをエラと近づけようとすると!!
もれなくダンもエラと交流を持ってしまうっ!!!!
(ええと、確かダンルートを解放するには……家事料理のステータスを上げるんだっけ?)
攻略対象のキャラによって、ルート解放の条件が異なる。
ダンルートはたしか、料理家事のステータスを上げてから、調理実習でクッキーを作ってヴィセルフをお茶会に誘うと進めたような。
(そうだ。それでヴィセルフが「こんなの食えるか」ってエラのクッキーに紅茶をぶちまけて帰って、見かねたダンがそのクッキーを食べてくれるんだ……)
いや本当に、ヴィセルフ最低すぎでは……。
ともかく、今日のパーティーにヴィセルフが行ったところで、エラの家事料理スキルが上がるとは考えにくい。
ましてや招待客であるエラが、手作りクッキーなんて持ってきているはずもないし。
(なら、心配しなくても大丈夫かな)
そもそも、ゲームは学園入学からのスタートだったはず。
でもここは念のため、エラの家事料理スキルが上がりそうなイベントにヴィセルフを送り出さないようにしないと……。
(それもこれも、このまま侍女を解雇されなければの話かあ……)
うう、と持つ本に力を込めた刹那、
「……さっきから変なうなり声がスゴイんだけど、まだ頭痛いの?」
「! クレア」
二段ベッドの上部から、クレアがひょこりと顔をのぞかせる。
勤務中はきっちりとまとめられている髪も今は解かれていて、重力に従ってさらりと流れ落ちた。
うーん、羨ましきキューティクル!
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