この雨続きの毎日に爆炎をっ!!
「雨だな~」
「雨よね~」
梅雨入りし、雨が続いていた。
雨だから、という理由で、カズマとアクアは部屋から出ず、ただひたすらにだれていた。
「カズマ、引きこもっていないでクエストを受けよう!体がなまってしまうぞ!」
「本心は?」
「ずぶ濡れになりながらモンスターの猛攻を受け続けたい!!!」
カズマの問いに、ダクネスはよだれをたらしながら即答した。
「カズマ、引きこもっていないでクエストを受けましょう!冒険者たるもの、日々の鍛練を怠ってはいけません!」
「本心は?」
「もう5日も爆裂魔法を撃っていません!カズマがいなければ、誰がわたしをおぶってくれるというのですか!」
「やだよ!なんでこのどしゃぶりの中、倒れたお前を運ばなきゃいけないんだ!」
「力を使いはたし、地にふして泥だらけになった私の体を、どしゃぶりの雨が打ち付ける。体温を奪われ、冷たくなっていく体・・あぁ、なんてご褒美だ!」
「めぐみん、ダクネスに運んでもらえ」
「気持ち悪いので嫌です」
「め、めぐみんにまで言われた!」
ダクネスは、ちょっと嬉しそうだった。
引きこもっていても腹は減る。
カズマたちは、いつもの場所でいつものを飲んでいた。
「ぷっはぁ~!労働のあとの一杯は最高よね~!」
「アクア、毎日なにもしていないじゃないですか。あと、わたしにもシュワシュワをください」
ふと、隣のテーブルからの会話が聞こえてきた。
「最近、雨ばっかりじゃない?下着とか乾かないよね~?」
「そうそう!洗濯物乾かないから、部屋に脱いだ下着がたまっちゃって!嫌になるわ!」
綺麗なお姉さんたちの会話を聞きつけ、カズマはエセ紳士を装いながら近づいた。
「そこの綺麗なお姉さんたち!明日、この冒険者サトウカズマが、あなたたちのために雨をやませてみせましょう!下着でお困りのあなたたちを救うのは、このサトウカズマです!」
え?何この人・・私たちの会話聞いてたの?やだ・・・。お姉さんたちはそんな顔をしていたが、カズマは気づいていなかった。
次の日、もちろん雨はやんでいなかった。
「めぐみん、お前に爆裂魔法を撃たせてやる!」
「本当ですか?わたしをおんぶしてくれる気になったのですね?!」
カズマの一言に、めぐみんの目が輝いた。
「同じパーティーの仲間、だろ?」
カズマは芝居くさくかっこつけてはいたが、もちろん本心ではない。
「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!6日ぶりの、エクスプロージョン!」
めぐみんの放った爆裂魔法が、アクセルの街を多い尽くしていた分厚い雨雲を吹き飛ばした。
久しぶりの太陽の光が、アクセルの街中を眩しく照らした。
みな、外に出て歓喜の声をあげた。
「おおお!あの頭のおかしな子が雨雲を!」
「たまには役に立つんだな、あの変な名前の子!」
「使い道あったんだな、あのネタ魔法」
「なにか釈然としませんが、久しぶりの爆裂魔法、気持ち、良かったです・・」
めぐみんはやり遂げた顔をし、直立のままばたりと顔面から倒れこんだ。
「みなさんを困らせていた雨雲は、俺たちがみごとに打ち倒しました!この、サトウカズマが!サトウカズマが雨雲を!」
「カズマさん、自分の手柄にしようとしてないかしら?」
「爆裂魔法で雨雲を無くしたのはめぐみんだ。カズマはなにもしていないぞ」
アクアとダクネスのカズマにたいする評価が下がりに下がった。
我先にと、外に洗濯物を干しにかかる人々。
みな笑顔を浮かべていた。
「人助けとは、いいものだな。自分の手柄にしたことは誉められたことではないが、カズマ、たまには良いことをするんだな」
「ダクネス、俺はいつも、みんなのために動く男、だぜ?☆」
カズマは、街中を歩きながら、昨日のお姉さんたちを探していた。
絶対に下着を干しているはず。そして、綺麗なお姉さんから感謝されるはず。あわよくば・・カズマの頭の中は欲で溢れていた。
が、しかし。
めぐみんが雨雲を吹き飛ばした数十分後。
カズマの頭の上にぽたりと落ちる、1滴の雨粒。
それをかわきりに、雨粒はどしゃぶりに。
そう、めぐみんが吹き飛ばした雨雲は、ほんの一部だけだったのである。
「なんだよ、また雨かよ!」
「ぬか喜びさせやがって!」
「洗濯物とりこまねーといけねーじゃねーか!二度手間だよ!」
「ったく、余計なことしやがって!」
住民は怒り狂い、悪態をつきながら洗濯物を取り込み、家の中へと消えていった。
「カズマ、残念だったな・・」
ダクネスに優しく肩をたたかれ、お姉さんから感謝されると思っていたカズマの顔面は、涙と鼻水でどしゃぶりだった。
ただ、カズマにおんぶされていためぐみんだけは、久しぶりに爆裂魔法を撃てた気持ちよさと、カズマの背中の温かさを感じて、とても良い笑顔を浮かべていた。
おしまい。
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