知らぬ世界

「496…497…498…499……500!お、終わったぁ…ぜぇ、ぜぇ、、、」


現在、昴流は家でトレーニングに励んでいる。力也が昴流に与えたトレーニングメニューのメモ、道具がなくてもできるものが多いため家でこなすことができる。しかし、、、


「初日から、、ヒンズースクワット500回は…ほんと死にそう…こ、この後腕立て50回に腹筋100回、足上げ腹筋50回って、僕は、プロレスラーにでもなるのかな」


正直言って、死ぬほどキツイ。最初の1ヶ月のメニューは、初心者用とメモに書かれてるが、、実際このメニューは部活動をやってる人間でもキツイだろう……


「こ、こんなにキツイなんて…強くなるためだ。僕は変わるんだ!」


自分に発破をかけ、辛くて辞めそうでも嫌になってサボりたくなっても、変わるという意思が、彼の心に火を焚き付けた…


そして、3ヶ月の月日が経ち、昴流はメニューを全てこなした。


3ヶ月の月日が経った時、昴流はまず朝に、自分の部屋で上半身の服を脱ぎ鏡を見たという。どれぐらい自分が変わったのか自分で見てみたかったからだ。まず顔つきが違かった。以前よりシュッとした。そして、筋肉…ボディビルダーのように分厚く大きい訳では無いが、無駄な脂肪が無くなり、腹筋も綺麗に割れていて胸板も厚くなっていて、男らしい体になっていた。アスリート体型というのだろうが、そういうよりも想像以上に体は絞れ、その体は美すら感じるだろう。


「確か……」


その時、昴流は力也に渡されたメモの最後のページを開いた。なぜそんなことをしたか。力也は、昴流と別れる時、実はこう話していた。『そのメニューをクリアしたら…メモの最後のページを見ろ、いいな。』とそして、言われた通り、メモを開くと、最後のページには住所が書いてあった。そして、そこに夜6時に来いとも書かれてあった。


「この場所って…今は…」


その住所を見て、昴流は不思議に思った。その場所は、20年前に既に閉鎖されているボウリング場の住所だったからだ。不思議に思いながらも夜6時にその場所に来てみると、、



「あれ?お前昴流か?変わったなぁ。あのメニューちゃんとやってた証だな。」



後ろから聞き覚えのある声で、昴流を呼ぶ声がする。力也である。3ヶ月しっかりこなしたことで顔つきや体格が変わっていたことから認識に遅れたらしい。


「力也さん!久しぶりですね。しかし、ここって…」


「ここは俺のバイト先だよ。ついてくれば分かる。」


ただ、着いてくれば分かるとだけ告げ、昴流を中へと案内する。そうやって進んでいくと、黒いスーツを着た黒髪オールバックの40代頃のダンディな男が立っていた。


「やっと来たか、力也…もう少しで時間だぞ…って、隣の奴誰だよ」


「すまねぇっす迅さん。こいつと待ち合わせしてたもんで、、普通に一般の高校生ですよ。俺の弟子ですよ。」


「はぁー?! こんなとこに一般のガキ連れてくるやついるかよ!」


「とりあえず、俺、控え室行ってくるんで、こいつの案内頼んだっすよ。」


「おい、待て! 力也! 」


力也は、昴流と迅と呼ばれる男を置いて、どこかへ行く。迅という男、力也に振り回されている苦労人のように見える。


「えぇと、とりあえず。俺は、黒川 迅(クロカワ ジン)ここのことについて力也から説明は聞いてるか?」


「自分は、天野 昴流です。説明は受けてないです。」


「全く、力也のやつは…説明もなしに」


黒川は、やれやれと少し頭を悩ませながら話す。昴流は、黒川 迅という名前をどこかで聞いたことあるような気がした。


「まぁ、そろそろ始まるし、、見ながら説明しよう。実際一般人がそうそう来れる場所じゃあないんだがな」


「は、はぁ、、、」


黒川は、昴流に着いてくるように話す。とりあえず、今は潰れているボウリング場の中へ、中というより地下駐車場に向かった。地下駐車場には、エレベーターがあった。そのエレベーターのドアの上には何やらカメラがあり、そのカメラに対して、黒川は『私だ』と述べるとそのエレベーターのドアが開く。


「昴流くん、、、君は普通の高校生だ。これからの人生こんなものはまず見れないだろう。これから見るのは、普通に歩むものはまず見れない世界。成功したものか失敗したものだけが見れる世界。覚悟をしてみるんだ」


「そ、そうですか、、、」


昴流は、黒川の言ってることが理解できなかった。しかし、黒川の凄みのある言葉は何となく彼の心に響いたことだろう。


「では、ようこそ…我が園、、『champ kingdom』へ…」


エレベーターを抜けた先、扉が空いた瞬間。大きな歓声と罵声、騒ぐ観客の声、色んな声が混ざり合う中、、円状に包む観客席、真ん中には円状のフィールド、地面は砂でおおわれている。天井には輝くシャングリラ、まさしく高級な祭り、、昴流はその風景に呆気を取られていた。


「昴流くん、、、champ kingdomは、私が作った格闘場だよ。格闘技には様々な種目がある、、、それ毎にチャンピオンがいる。沢山チャンピオンがいることになるのさ、、ここではチャンピオン達によるチャンピオンを決める戦いだよ。」


「格闘技ですか、、こんな世界があるなんて…って、作ったんですか?!」


作ったという発言に驚いた。本当に何者なのだろうこの人、と昴流は思った。しかし、それよりも何よりも昴流は目の前の風景に目を輝かせていた。アニメや漫画が大好きな年頃の高校2年生、そんな彼がこんなまるで漫画のような世界を見れることに楽しさを感じていた。



「あ、あのもしかして…黒川さんって、、あの…黒川建設の社長ってことは、、」


「あぁ、その通りだよ。よく分かったね。」


「ほ、本当ですか?!な、なんか僕御無礼とかは」



黒川建設、それは建設業界の王様と呼ばれる企業、黒川建設にはライバル企業は存在しない、、何故なら黒川建設に対抗しようとするものがいないからだ。それほど建設業界においてすごい存在感を放つのが黒川建設、その黒川建設を20歳の時に立ち上げ、それから20年、建設業界で知らない人はいない企業にしたのが、この人、黒川 迅である。黒川は、格闘技ファンである。それも大の格闘技ファン。そして、稼いだお金と権力、知力をフル活用して作られたのがこの、『champ kingdom

』である。これは、賭け格闘技である。ギャンブルと格闘技を掛け合わせた至高の裏格闘技場なのである。



「大丈夫だよ。昴流くん、かしこまらなくても、、まぁ力也のようにフランクすぎるのもダメだが、所詮人は人だ。」


「は、はい!」


「そう肩に力を入れないで、さぁ、メインが始まるよ。入場ゲートを見るんだ。」


なんて話していると、湧き上がる歓声、地面から火花が出る演出、なんというかロマンがある演出である。すると、リングアナから大きな声が聞こえてくる。


「皆さん!お待たせしました!誰が呼んだか最強よ、誰が作ったか最強よ! 齢18の若獅子が数々の獅子を喰らい、王の名を手に入れた!そう、我らがチャンピオンの入場です!!」


リングアナの声とともに、入場ゲートから盛り上げるように金髪、164センチ、小柄ながらもその存在感を身体中から出しながらゆっくりとその男は姿を見せる。


「あ、あれって、力也さん?!」


その男の姿を見て昴流は、驚く、何を隠そう、その男…自分のヒーロー、金剛 力也である。


「そう、彼は…金剛 力也は、裏格闘技champ kingdomのチャンピオンだ。」



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