三回目 ⑯惑う篝火
三回目の後夜祭は、たった一人で篝火を眺めていた。
梨乃は部室に残り、柚希はどこかへ行ってしまったみたいだ。どちらにも特に声をかけることもなく、寧ろ彼女たちから距離を取るべくして僕はグラウンドへ向かった。
そこは相変わらずのお祭りムードで、僕の心中とは相容れない場所だった。だがらこそ、適した拠り所でもあったのかもしれない。
静かな部屋で一人悶々と考え込むよりかは、少しばかり騒然としたグラウンドの方が居心地がよかった。
部室での片付けの際、誰一人として口を開くことはなかった。柚希と梨乃の間に何があったのかは結局わからず終いで、その上、僕と梨乃までもが拗れる始末。繰り返し現象を解決するどころか状況は完全に悪化している。
それにしても、梨乃の変貌ぶりには思い当たる節がなかった。僕はただ、二人の間に何があったのかを訊ねただけだ。なのに梨乃は、まるで僕を突き放すようなことばかりを口走って、挙句の果てには逃げ出した。
一体なぜ? 僕はどこで何を間違ってしまったんだ?
柚希も梨乃も、僕にとっては何よりも大事な友達だ。それは決して嘘じゃない。
僕が柚希のことを異性として好きなのは確かだ。だからといって、梨乃のことが大事じゃないなんてことは絶対にない。ならどうして僕は、あの時他の言葉を探すことが出来なかったんだ……。
梨乃の様子が変わってしまったのはいつだ? どのタイミングだった?
燃え盛る火の手を一心に見つめる。そこに答えがあるような気がした。
“ずっと一緒に居たいって、そう思える人のことを好きって言うんじゃないか?”
もしかして僕は、あの時既に答えを間違っていたんじゃないだろうか。
そして、僕は梨乃を傷つけたんだ。
まるで何かを確かめるかのような問いかけだった。
梨乃は何を確認していたんだ? それは僕の知りえることなのか?
“ねえ瀬戸君。……好きっていうのは、どういうことを言うの……?”
誰でもいいから教えてほしい。
――好きっていうのは一体何なんだ?
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