めぐみん聖誕祭SS 爆裂娘に祝福をっ!!

こば天

爆裂娘に祝福をっ!!

12月24日は、めぐみんの誕生日である。


アクアたちはサプライズパーティーを開くべく、めぐみんを屋敷から連れ出すにはどうしたらいいかを話し合った。


「いいかカズマ。お前がめぐみんを連れ出すんだ。とにかく遠くへ連れ出せ。できれば夜まで帰ってくるな」


「カズマさん、この作戦は全てあなたにかかっているのよ?自然な感じで連れ出すのよ?わかってるわよね?」


ダクネスとアクアに釘を刺されまくり、カズマは作戦を開始した。


みなが集まり、朝食を食べ始めたころあいを見計らって、カズマは『自然に』めぐみんに話しかけた。


「めぐみん、おはよう。今日はとてもいい、天気だね♪ははっ」


「カズマ、朝っぱらから気持ち悪い顔をしていますね。病気ですか?」


「違ぇ~よ!失礼だな、おい!」


カズマは精一杯のキメ顔をバカにされ、涙目で怒鳴った。


しかし、ここでキレてしまってはめぐみんを屋敷から連れ出す作戦が失敗してしまう。


カズマは気を取り直して精一杯のキメ顔をし。


「めぐみん、今日はどこに爆裂魔法を撃ちに行く?君のいきたい場所へ、どこへだって連れていくよ?」


「・・アクア、カズマが変なのです。いつもならめんどくさがって行きたがらないのに、今日に限ってカズマの方から爆裂魔法を撃ちに行こうと言い始めましたよ?」


カズマのあまりの不自然さに、ダクネスが合いの手を差しのべる。


「めぐみん、そう言えば最近、ゴーレムが頻繁に目撃されているらしいぞ?撃ちたくはないか?撃ちたいだろう、ゴーレム!」


『撃ちたいですっ!』


めぐみんは、ちょろかった。


『ばっくれっつ♪ばっくれっつ♪』


カズマとめぐみんは仲良く鼻唄を歌いつつ、スキップをしながら楽しそうに出掛けていった。


「ダクネス、ゴーレムが出たなんて話、ここ最近では聞いたことないけど?」


「アクア、すまん。あれはわたしがついた、とっさのウソだ・・」


めぐみんは、簡単に騙された。ちょろかった。


「ま、なんでもいいわ!さっそくパーティーの準備を進めちゃいましょう!」


「カズマ、すまん。頑張ってめぐみんを引き止めておいてくれ・・・」


アクアとダクネスは、パーティーの準備に取りかかった。




「アクア様、今日はめぐみんさんの誕生日パーティーにお呼びいただけて、わたしはとっても嬉しいです~」


「あっそ。何でもいいけど、これを早く買ってきてちょうだい。ダッシュよ、ダッシュ!」


「は、はい~!これを買ってくればいいんですね?行ってきます~!」


アクアは雑用を押し付けるための使いパシりとして、屋敷にウィズを呼び出した。


挨拶もそこそこに、アクアから買い出しリストの書かれた紙を乱暴に手渡され、ウィズは慌てて買い出しに出掛けていった。


「アクア、少しはウィズに優しくしてやれ」


「い・や・よ!わたしは女神よ?アンデッドなんかと馴れ合うつもりはないわ!」


ちなみに、ウィズに買い出しを頼んだアクアだったが、代金は1エリスすら払うつもりがなかった。


パシらせた上に代金すら払わないという、極悪駄女神アクア様である。


「戻ってきたら、労いの言葉をかけてやろう・・」


ダクネスの優しさを。


「ダクネス、余計なことはしなくていいわ。あの腐れリッチーを甘やかしたりしたら、きっと調子に乗るに決まってるんだから!アンデッドなんてそんなものよ!」


アクアはいとも簡単に一蹴した。


そのころ、カズマたちは。


「カズマ、どこにもゴーレムなんていませんよ?!わたしの今日の標的はどこですか?!」


いや、知らねーよっ!とカズマは心の中で毒づいた。


ダクネスの言っていた、ゴーレムが目撃されるとおぼしき場所へとたどり着いた二人だったが、そこはモンスターの1匹もいない、ただの岩場だった。


「うぅぅぅぅぅ、これでは爆裂魔法が撃てないではありませんかっ!カズマ、ここで撃ってもいいですか?」


「やめてください。ここで撃ったら岩が飛び散って大惨事になりそうなんで」


いつもはひとけのない、まっさらな大地にむけて『エクスプロォォォォジョン』しているのだが、ここで撃ったら飛び散った岩がどこまで飛んでどこのだれに当たるとも知れない。


ましてやここは街道沿いである。通行人にでも当たったら大事だ。


「飛び散った岩くらいなんですかっ!派手でいいじゃないですか!」


「いや、気にしろよっ!俺の方に飛んできたらどうすんだ?かすっただけで死ねるわ!」


岩場に向けて撃ちたいめぐみんと、岩場は危険すぎると止めるカズマ。そんな二人に声をかける者がいた。


「あんたら、こんなとこでなにしてんだい?この辺は最近、岩石ゴーレムが出るから危ないよ?」


行商人の太ったおじさんだった。


「えっ、まじでゴーレム出るんすか?」


「うん、出るよ。いつもは岩に擬態してるんだけど、騒ぐと出てくるんだ」


「カズマ、ダクネスの言っていたことは本当だったのですね?!」


「じゃぁ、わたしは行くから。気をつけて帰るんだよ~」


太ったおじさんは馬車に乗り込み、走り去っていった。


「カズマ、ゴーレムを探しますよっ!」


あ、本当にいたんだ。


ダクネスのことを、ちょっとだけ見直したカズマさんだった。カズマだよ。


そのころ、屋敷では。


「くしゅんっ!」


「ちょっとダクネス、こっちに向けてくしゃみしないでよっ!」


「すまないアクア。急にくしゃみが出てしまったのだ」


「まったく、気をつけてよねっ!あれ、誰か来たみたい?はいはぁ~い、今出ますよぉ~」


入り口の方から声がして、アクアは来客を出迎えた。


「すいません、ダスティネス・フォード・ララティーナ様はいらっしゃいますか?お届けものなのですが」


「ララティーナ、荷物が届いてるわよぉぉぉ~!聞こえてるの?ララティーナァァ~?!」


「その名で呼ぶなぁぁぁぁああ!」


ダクネスは顔を真っ赤にし、涙目になりながらサインをして荷物を受け取った。


「ララティーナ、その荷物は何?」


「めぐみんのために用意した霜降り赤蟹だっ!アクアにはやらんからなっ!」


「嘘ウソッ!冗談よララ・・ダクネスゥゥ~!機嫌なおして、ねっ?」


「知らんっ!わたしは料理の下ごしらえをするから、アクアは飾り付けでもしてろっ!」


「あぁ~ん、ダクネス、ダクネス様っ!後生ですからっ、許してぇぇぇ、かにぃぃぃぃ!」


「えぇい、ひっつくなっ!こらっ、カニを離せっ!」


アクアは泣きながらダクネスにしがみついた。霜降り赤蟹は、この世界では極上品なのだ。


そのころ、めぐみんたちは。






「うわぁぁぁぁぁぁぁ~!やばいやばいやばいやばい!」


「か、かかかかかかずまっ!囲まれましたぁああああ~!」


カズマとめぐみんは、完全に岩石ゴーレムの群れに囲まれていた。


「だから早く爆裂魔法を撃てって言ったろ~が!」


「だって、まとまった所をいっぺんにやったほうが気持ちがいいじゃないですか!」


最初は1体だけだった。


それが2体になり、今では9体。


三体目あたりで早く撃たないとやばいぞ、早く撃てとめぐみんを急かしたのだが、めぐみんは目を輝かせて『まだです、まだまだです!』とか言って渋っていたらこれである。


岩石ゴーレムはゴーレム種の中では比較的小柄で弱い方だが、いかんせん数が多い。


「しかたない。めぐみん、俺が囮になる」


「カズマっ?!」


「やつらは動きが遅い。俺が引き付けるから、お前は離れて爆裂魔法を撃つ準備をしろ。おらっ、ノロマなゴーレムどもっ!食らいやがれっ、クリエイト・ウォーター!」


カズマの水魔法に、ゴーレムはひるんだ。


岩石ゴーレムには水魔法がよく効くのだ。


カズマは動きの鈍い岩石ゴーレムの脇をすり抜け、全てのゴーレムたちに満遍なくクリエイト・ウォーターを当て続けた。


水魔法を警戒したゴーレムたちは、カズマのほうに注意がそれた。


その隙をつき、めぐみんはカズマとは逆方向に走り。


「紅き刻印、挽回の王。天地の法を敷衍すれど我は万象祥雲の理、崩壊破壊の別名なり永劫の鉄槌は我がもとに下れ」


カズマは、岩が密集している隙間に身を滑らせた。


「めぐみん、撃てぇぇぇぇぇ~!」


「エクスプロォォォォジョンッッッ!!」


めぐみんの放った爆裂魔法は、岩石ゴーレムたちを跡形もなく消し去った。


岩場もろとも吹き飛ばし、天に向かって大小さまざまな岩石が舞い飛んだ。


カズマさんも爆風で派手に吹き飛び、地面に4・5回叩きつけられ、10回くらい転がって・・手足を投げ出し動きを止めた。


「あぁ、気持ちいい・・ですぅ~」


めぐみんも魔力を使いきり、顔面から倒れこんで動かなくなった。


そのころ、屋敷では。


「ダクネスゥゥゥ、このカニも茹でちゃいましょうよ~」


「こらアクアっ!1匹だけと言っただろう!昼間から酒を飲むなっ!」


アクアは、カニを肴に一杯やっていた。


味見しなきゃダメよ!今日はめぐみんの誕生日なんだから、変なものはだせないわ!っと、言葉巧みにダクネスを騙し、アクアはカニをつまみに酒をあおった。


「アクア様、そんなに飲んだら夜までもちませんよ?めぐみんさんの誕生日の準備も終わってませんし・・」



「なによっ!わたしのお酒が飲めないって言うの?ウィズッ、お酌しなさいよ!気がきかないわねっ!」


買い出しから戻ったウィズに、酔ったアクアが絡みはじめる。


「ほらっ、飲みなさいよっ!わたしが清めたお酒よっ!飲みなさいよ、呑めぇぇぇ!」


「アクア様、やめてくださいっ!それを飲んだら、アンデッドのわたしは浄化されちゃいますぅぅぅ~!」


[newpage]

めぐみんは温かなぬくもりと、心地よい揺れに目を覚ました。


「めぐみん、起きたか?」


「カズマ、体は大丈夫なのですか?」


「全身悲鳴をあげてるよ。でも、早く帰らないといけないしな」


「わたしの誕生日を祝うためですか?」


「なんだ、バレてたのか」


「朝のカズマの態度を見ていたらわかりますよ。わたしがいたら準備ができないでしょう?」


「さすがは、聡明な紅魔族様だ」


「ふふっ。もっと誉めてもいいんですよ?」


めぐみんはカズマの肩に回していた腕の力を強め、カズマの背に強く身を預けた。


「わたしは、良い仲間を持ちました」


「そうだな。帰ったら、ぱぁ~っとやろうぜ!」


「はいっ!」


めぐみんは、ぎゅっとカズマの背にしがみつき、幸せを噛み締めた。


そのころ、屋敷では。


「アクア、もう食べるなっ!カニがっ!せっかくめぐみんのために取り寄せた霜降り赤蟹がぁぁぁ!」


「あ、アクア様・・もう、勘弁してくださ、い・・」


「まだまだよ、ほらっ!飲みなさいっ、飲みなさいよっ!」


「あぁっ、ウィズがっ!ウィズの体が透明にっ!カズマ、めぐみん、早く帰って来てくれぇぇぇぇええ~!!」


屋敷中に、ダクネスの絶叫が響き渡った。































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