第24話「話し合い②覚悟の言葉」

 KKMについての今の状況を話し終えたところで、神谷は今にも爆発しそうなほど不機嫌な顔になっていた。


「そういう訳で、KKMは今、所帯が三十人を超えて未だ拡大傾向にある。前にも話したけど、神谷が殴るたびに奴らはメンバーを増やしていくから、今以上に増えて騒ぎが大きくなったら、風紀委員以外にも教師連中が出てきて、大きな問題になる。親御さんとか呼び出しがきて、最悪、停学処分っていうのも考えられる」


 俺が説明し終えた後で、神谷はうっすらと気味の悪い笑い方をした。


「関係ないわね。私も腹が立ったら殴るし、なめられたままいるよりはずっとマシよ。『神谷かえでを愛でる会』? 私に殴られることを喜びに? そんなふざけた会叩き壊してやるわ」


 容姿とはまるで正反対のヤンキーのごとき啖呵を聞き、前なら俺はよく考えろ、停学するかもしれないんだぞ、親とか呼ばれてもいいのかというところだったが、今日は違う。


 そういう建前はもういわない。


 だから俺は本音をはっきり正直にいってやる。


「困るな。そうされると俺が困る」

「――はあっ?」


「だから俺が困るんだよ。神谷が暴れると、俺が先生に怒られるし、ちづる先輩からがっかりされるだろうし、学級委員としての面子丸潰れだ」

「……あんたなにいってるの?」


 初めて見た神谷の笑顔は引きつり笑いだった。人間怒りがたまりすぎると、笑うんだな、マジ怖いわ。


 だからといって俺はここで話をやめるつもりはない。まだ序の口だ。ここからだ。屍になったら誰かが拾うがいいさ。ここ、人通りなさそうだけどな。


「神谷にいっとくけどな。俺は別にお前が停学しようが、KKMに困らされようが、正直知った事じゃないんだ。半分以上お前のせいだと思っているしな」

「このっ!」


 とうとう神谷の手が出る。

 俺はよけず、その左ボディーブローを受ける。

 痛みを我慢し、話を続ける。未だ言いたい事を言い切れてはいないのだから。


「お前は俺みたいな奴が一番嫌いだっていったな? 結構。俺もお前が嫌いだね。大嫌いだといってもいい。勝手すぎるんだよ、本当。他人の迷惑考えろ」


 二撃、三撃と容赦ない追撃をくらう。

 あいかわらず女子の攻撃とは思えない威力だ。でも俺は続く言葉をやめるつもりはない。

「……痛っ《つう》、けど、俺らは両方ともKKMを疎ましく思っている。奴らに干渉されたくないと思っている。そうだよな?」

「あんた以上に疎ましい奴なんていやしないけどね!」


 叩かれた頬の衝撃で口の中をきり、血の味がするが、知った事か。


「そりゃあお互い様だ。気が合うな。そうだ、俺たちは利害関係も合う。だから提案だ」


 神谷お得意の右ボディーブローが鋭角にリバーに突き刺さり、崩れ落ちそうになるがまだ我慢。我慢しろ、俺。一試合完投した時の方が大変だっただろうが!

 俺はとうとうその一言を口にする。





「神谷、俺の彼女になれよ」 




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