第14話「KKMは活動中です」
「神谷さんって本当きれいです――うえっ!」
バチン!(ビンタ一発)
「か、神谷さ、さん、あっ、あっのぉ、今日も美しい――ひぃっ!」
バキッ!(ミドルキック一発)
「最高っす! 神谷さんマジ、ビューティーっすぅ!」
ドン(腹パン一発)
神谷の怒りの暴力と共に築かれる恍惚とした屍たち。
去り際に舌打ちをして、ゴミを見るように一瞥して去っていく神谷。
「……おいっ、なんか増えてないか、変なのが」
音楽教室に移動中に起きた出来事を目の当たりにして、俺は一緒に歩いている吉崎にうそぶく。クラスメイトもあえて禁句をぶちまけて、散らされる生徒を見てひそひそと話し合っている。
最近、神谷に絡んでくる性質の悪い奴らが急増し始めている。くそっ、今のも神谷を止める暇がなかった。悪目立ちしすぎると、後でユッキーに何をいわれるか分かったものではない。
「ああ、KKMの連中だろ? なんか会員数がもう二十名超えたらしいぜ」
スマホを触りながら、吉崎は返答してくる。ミスコン女子の五名の内二名のメアドをゲットしたようで、連絡をとりあっているようである。ちなみに三人には相手にされず、無視。二人は確か友人の友人経由で聞きだしたらしい。確か、友人の彼女の元彼情報を売った見返りにメールアプリのアカウントを入手したりしているようだ。やり方が汚い。手ひどく振られてしまえばいいと思っている。
「うそ……そんな、あのアホな会って、そんな急増してんの?」
「今の見ただろう? 二人は確か既に会員じゃねーかな。後、一人は知らねーから、入会試験だったんじゃねーの、今の」
んー、なんて連絡しよう、とかぼやきながら適当に応えてくる吉崎が恨めしい。
「えっ……っていう事は、神谷が殴るたんびにああいう奴らが神谷の周りに増えてくるって事か?」
「ああ、そうなんだろうよ」
「ちょっと、マジかよ……」
うおっ、待ってくれ、頭痛がしてきた。
それ常に俺が神谷を事前に止めないと、どんどん俺の立場もやばくなってくるというわけじゃないか?
思っている側から、前方から神谷へと接近し、禁句をぶちまけそうなぽっちゃりめな男子生徒が現れたので、俺は急ぎ近づいた。
「神谷さん、お願いです。そのきれいな
禁句と変態的発言という神谷の怒りのボルテージを上げてくれるぽっちゃりめな男子生徒。困った事にいっている事がさっきの奴らよりワンランク上だった。
「……きもい」
神谷の侮蔑一色の一言と共に拳が放たれる前、俺は見事、神谷とぽっちゃりめな男子生徒の間に入り、ぽっちゃりめな男子生徒に代わり、ボディーを鋭角にえぐる角度で受け止めた。
あまりの痛みに腹を抱えたい気持ちだったが、俺はそのまま後ろを振り向きぽっちゃりめな男子生徒をにらむ。かつて荒れていた時の自分の表情を思い出しながら。
「お前、もうチャイムなって授業が始まるぞ。周りの目もあるし、教室に戻ったらどうだ」
馬鹿な事という言葉に対して、ぽっちゃりめな男子生徒は眉根をよせ反応したが周りの俺のクラスメイトの視線にも気づいてそそくさと去っていた。
俺がほっとしてると、神谷が舌打ちをしてくれる。
「……あんたこそ何、邪魔してくれてんのよ」
不機嫌な神谷が俺をにらんでいた。さっきの俺のにらみが小学生がすごんだ位にしか感じられない、さすがの眼力で。
しかし、ここは俺の事をほめてもらいたいくらいである。神谷だってああいう変な奴らがたくさん増えるのは困りものだろう。これだけ怒っているわけだし。説明すればいかに神谷といえど分かってくれるはずだ。
「いや、待て、俺はただお前が今の奴殴っちゃったら、馬鹿をみることになると思ってだな」
「誰が馬鹿をみるっていってんのよ、私に関わってきて馬鹿をみているのはあんたじゃない……本当あんたは何度関わるなっていったら理解できるの? 馬鹿なの? それとも殴られたりないの? そう、じゃあ、ちょうどいいわ、私も殴り足りないから」
「ちょっと、なんでそうなる! 待っ――ぐふっ!」
もう一発同じところにボディーをもらって、俺は耐え切れず崩れ落ちた。
神谷はそのまま音楽教室へ向かっていく。
吉崎は薄情に俺の体をまたぎ、スマホを見ながら、言葉をもらす。
「ちなみにさっきの奴は既に会員だから」
殴られ損かよ、俺は! ちくしょうめ!
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