第2話 弱いキャラはなんやかんやあっても、結局弱い。

扉を開けると草原に出た。前にボロい家が幾つかあるのが見える。このゲームは基本的には領土ゲームだから、あれが最初の領土なのだろう。


銀髪美女と二人暮らしか、、ボロ家でも悪くはない。めくるめくキャッキャッウフフの世界。


「あのボロいのが家か?」


「そうだと思うが」


「・・そうか、必要な時は呼んでくれ。さらばだ」

ムースカはそう言うと、ゆっくりと上昇していく


「いやいや、帰さねーからな。人は土から離れては生きられねーんだよ」

行かせてなるものかと、浮いているムースカの足に抱きつく。くそっ何でこいつズボン何だよ。ワンピースじゃねーのかよ、見えねーじゃねえか。


「私はまだまだなのだ。私のMは性的嗜好に限られている、家がボロいとか、金銭がないとかには耐えられるレベルでは無い。未熟なのだ私はっ、離せ、こら離せ」



「お待ちしておりました・・・何をされているのですか?」

2人でわちゃわちゃしていると、家から出てきた住民が集まっている。


「何をしているかって、そうだっ、縄とかないですか? 頑丈なやつ」


1人が家に戻り縄を渡してきた。思ったより細いが、まあ大丈夫だろう。縄と聞いてからムースカの浮力はなくなり、かろうじて浮いているだけに変わっている


縄をムースカの左手首に結び、自身の右手首にも結ぶ。

「これだけなのかっ もっとこうあるのではないか」


「しょうがないだろ!縄が短いんだ。大人しくしてたらちゃんとしてやるから、震えて待っとけ」


「やるではないか、焦らす事で期待感を持たせるとは、良いだろう待ってやる」


シロウ達の場違いな会話を律儀に待っていた住民の皆さんだが、前にいる長老的な人がゴホ、ゴホと酷く咳き込んでいる。

「風邪ですか? 万病の元ですよ。皆さんこのかたを家に運んであげてください」


「風邪ではありません。そろそろ私にも話をさせて頂きたいのですが」


「あぁ、そういうことでしたか、うちの馬鹿が本当に申し訳ありません」


「馬鹿とは私のことか? 初めて言われたぞ。不思議だな、蔑まれたというのに良い感じだ」


「ゴホッ ゴーファ!」

長がすかさず咳き込み、会話を止めたぞ、やりおる。


「では改めて紹介させて頂きます。ここは大陸の南西部の村です。今、新しい領主様がこられたと神託がございました。領主様でございますな」


「そうだと思います」

シロウの返事に沸き立つ住民達。


「私の名前はシロウです。こいつはムースカ。これから宜しくお願いします」

シロウはペコリと頭を下げる。


「私はこの村で村長をしております。我が村に領主様をお迎え出来たことを大変嬉しく思います」


こうして俺の領主生活はスタートした。


◇《現実》


「おいっ どうだった最初のガチャ誰が出た?」

イケメンは何を言ってもイケメンだな。真司が言えば、ゲームの話も海外サッカーの話題に聞こえる。


「ムースカって奴。能力とかは解らない」

志郎がそう言うと真司はウーンッと少し考える。


「ムースカって聞いたことないな。ほとんどが歴史キャラで三国志とか戦国時代の武将ばかりのはずだからな、もしかしたらオリジナルキャラかもな」


「志郎に真司!聞いて、聞いて!スゴイの出たよ、私」

瑠璃は今日も元気だな。そしてうるさい。


「おはよう瑠璃、何が出たの?」

笑顔で答える真司、イケメン対応に隙がない。瑠璃は眼をキラキラさせている。何食えばそんなにキラキラするんだろう。毎日楽しそうでいいなー。


「なんと!関平だよ。そのうち無双しちゃうかも」

三国志の軍神関羽の養子である関平か。良いな。義理堅くイケメン、そして強いんだろう。


「スゴイじゃん。因みに志郎はムースカだって、知ってるムースカって言う歴史人物」


「私が知るわけないじゃん。関平だってゲームしてるから知ってるだけだし、真司はどうだったの?」


「俺か、俺は山中鹿之介だよ」

あれか、かっこいいやつはガチャもカッコいいのか? 鹿之介って言えば、史実では滅びゆく主家に最後まで忠義を尽くし戦った武将。生き様がカッコ良し。


ムースカがもしあれなら、2つの名言は誰もが知るほどの人物なんだけどね、生き様は(笑)としか言えない。俺がゴミのようだ。


「志郎はともかく、真司の鹿之介さんは普通? 私の関さんは女の子何だけどね。最初はあれしろこれしろって、教えてくれるんだよ。チュートリアル的なやつかな?」


「そうだな。鹿之介は男でいろいろ教えてはくれるけど、村の防衛をどうするとかが多いかな」

ムースカは特に何もしない。縄の結び方以外は助言も無かったと思う。


「今日も楽しみだね。1日2時間しか出来ないのがキツいけど」

瑠璃は最近ゲームに嵌り出して、寝ずにプレイしたみたいな事も言ってたからな、物足りないんだろう、勉強しろ!


「さすが瑠璃さん!」

増えた、うるさい奴が増えた。メガネが瑠璃の横で偉そうだ。


「でも瑠璃さん。プレイ時間制限があるし、課金が無いから面白くなりそうだよね。先行者の情報共有でネタバレしない」


「太一の言う通りかもね。リセマラで1日終わるとかシンドイ。早くゲームでみんなに会えると良いねー」



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