包み隠さない話

中学校の帰り道、俺はアカネと歩いていた。

「私さ、ブラジャーが欲しいんだよね」

溜息まじりにアカネが言い出した。

「なんだよ、いきなり」

俺の声が上ずった。

「いまスポブラつけてんだけど、ぺらっぺらで乳首透けるし、体育のとき胸が揺れて痛いんよね」

「親に買ってもらえばいいだろ」

おい、いくら幼馴染みだからって、少しは恥じらえよな。

「ムリ!私親と仲悪いから。いいよね、シュンの親は優しくて」

アカネは平然と言うけど、目が悲しんでいた。

助けてやりたいと思った。


夕食の時間、俺は思い切って真剣に言ってみた。

「なあオヤジ、俺にブラジャー買ってくれないか?」

場が凍りついた。オカンも妹も唖然となった。

オヤジは俺を凝視したまま、ピクピクと肩を震わせた。

「シュン、今まで気づいてやれなくてすまん」

オヤジの目に涙が溢れた。

「心は女だと気づいてやれなかった俺は、父親失格だ」

誤解は一時間続いた。

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