ルームキーを失くした部屋に知らない女が!
ホテル312号室の手前で俺は気がついた。
ポケットの中にルームキーがない。
どこで落としたのか…。
ちょうどそのとき312号室のドアが開いて知らない女が出てきた。
「エイヒレを食べながらスッポンと愛について語り合っていたジョゼフが…」
女は俺の目を見ながら意味深に言葉を告げる。
「…やっぱりホッケが食べたいと言い出して」
なんだ、この女は。
何者だ?
「…車で海に行く途中、排水溝から出てきたウナギに巻きつかれるシーンは、良かったわ」
不気味な笑み。
まさか、俺の小説を勝手に読んだのか!?
「でもウナギの恋人がヒジキだったというのはどうかしら?いくら小説とはいえ、それじゃちょっとできすぎだわ」
「い、今それを書き直そうと思っていたところだ!」
「そう。ならいいわ」
女はルームキーを投げてよこした。
くそっ、なんて的確な指摘なんだ!
歯ぎしりしながら俺が振り返ると、女はもうそこにいなかった…
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