行かんといて!

「ほんまに東京行くんやな」

「毎日電話するから心配すな」

「うん、きっとやで」

新幹線の扉が閉まる。

窓の向こうで彩香が手を振っているのがいじらしくてたまらない。

新幹線が動き出すと、彩香も一緒になってホームを走った。

ああ、彩香!儂かて本当はお前と!

彩香はホームの柵を跳び越えてまだ追いかけてくる。

「元気でな!悟(さとる)〜!」

「彩香〜!」

涙が溢れた。

新幹線はさらに加速する。


やがて名古屋に到着した。

扉が開くと息を切らした彩香が立っていた。

「なんか、ここまで来てもうたわ!」

「アホやな。びっくりするわ!ほならもう一緒に東京行こか」

「うん!」

笑みを交わすと、

「あ、駅弁まだこうとらへんわ」

「すぐ発車やで。急ぎいや!」

「うん!」


扉が閉まると、窓の向こうにはまだ駅弁を持った彩香が。

「悟〜!」

「アホやな〜!」

笑いながら涙が出た。

「彩香、好きやで。そういうとこ!」

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