100億円のコーヒー

ほのかに気怠い昼下がり、私は眠気覚ましにマクドナルドのレジに立ち寄ってホットコーヒーを求めた。

「100億円になります」

「うーん、すみません、やっぱりポテトのSも付けて下さい」

「ポテトのSを追加ですね。…では250億円になります」

しまった、金欠なのに無駄な買い物をしてしまったかもしれないな。

「Suicaでいいですか」

「こちらにどうぞ」

店員さんに促されてカードをかざすと、端末に残額が表示された。

<1兆3265億円>

こんな額、少し前までは考えられない大金だった。

それなのにまさか日本でこれほどのハイパーインフレが起きるとは。

来週にはもっと円が暴落しているかもしれない。


私は店を出ると、父の田舎の畑仕事を手伝いに戻った。

太陽のぬくもりを受けて大きく実ったカボチャを抱き上げ、無風の晴れた空を仰ぐ。

私が今まで稼いできたお金って、一体何だったんだろうな…。

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