第37話

 雪山の中、俺たちはどうすることもできなかった。セイジは再び意識を失い、レイも頭から血を流して倒れている。二人の脈を確かめてみたが、幸い生きているようだった。しかし、俺自身も無事ではなかった。頭から血が流れていて、さらに腕が思うように動かない。怪我をしている中で追い討ちをかけるように外では吹雪が舞っている。


 ナビに表示されている座標を見てみると、どうやら当初の目的地だった宇宙ステーションまではとても近いようだったが、船が墜落したせいで船に取り付けられている通信装置は壊れていた。このままだと連絡が取れない。船体には墜落した影響で穴が開いており、外気が船内に行き渡り始めたことで、次第に俺たちの居る操縦室が冷たくなってきた。


「…… 寒い」


 思わず口に出てしまったが、誰も返しの言葉を言ってくれなかった。二人は生きてはいるが意識を失っている。このままだと俺たちは凍え死んでしまう。俺は自分のデバイスから放たれる微かな熱で手を温めながら、この状況を乗り越える手段を探すことにした。


 レイに通信装置を直してもらおうと思ったが、レイは今、意識を失っていて直すことができない。セイジに頼んで考えるのを手伝ってもらおうかと思ったが、セイジも意識を失っている。ふと、俺の中で二人の存在が大きいことに改めて気がつく。そうか、俺はこの二人にずっと支えられていたのだなと感慨に浸る。デバイスから放たれる熱が次第に冷たくなっていく。起動すると、もう充電が持たなかったようだった。熱を放つ物を俺は操縦室の中を探し回るが、この部屋には何も置かれていなかったので、見つかるわけがなくて、思わずため息をついた。白い息が目に見える。よく見ると、二人の髪や眉が白くなっていることに気がついた。


 まずい。誰も助けを呼べない中で、俺は自分が生きるために、二人を生かすために、何か使えそうな物を必死で探した。それでも、目ぼしい物は見つけられなかった。俺のデバイスの充電が完全に切れて使い物にならなくなったので、俺はセイジのデバイスを勝手にポケットから抜き取って微かな熱で手を温める。二人の髪と眉はさっきよりも白くなっていて、外の寒さがどれほどものか理解できた。


 俺は角で、縮こまって寒さを凌いでいたが、次第にセイジのデバイスも充電が切れはじめた。このまま死ぬのだろうか。だとしたら、とんだ人生の終わり方だなと思う。そう思うと少し悔しくなった。次第に俺の体も寒くて意識が飛びそうになりはじめた。


 セイジのデバイスが使い物にならなくなったので今度はレイのデバイスを勝手に手に取った。レイのデバイスはエドによって改造されている。どういう改造だっただろうか。そう考えているとあることに気がついた。そうだった。レイのデバイスは改造されたことで、銀河一つ分の範囲ならどこでも通信ができるのだった。俺はそれを思い出して、怪我した腕を必死で動かし、すぐに行動を起こした。

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