第36話
俺はセイジと共に操縦室へと入る。
「大丈夫? 」
レイがセイジに容体を聞く。
「大丈夫だよ。俺は死なねーよ」
その言葉を聞いて俺とレイは安心した。
船はついに宇宙空間に突入していた。あたりの景色が真っ暗になる。船は鈍い音を立てながら、ゆっくりと宇宙という名の海を進んでいく。レイはアリスから聞いた座標を船のナビシステムに入力していく。この座標まで行けば安全だろうということだったが、この船の今の状況で果たしてたどり着けるのだろうか。入力を終えたレイが俺とセイジに尋ねる。
「座標はセットした。あとはワープを始めるだけだけど、途中でエンジンが停止しても大丈夫な覚悟はあるね? 」
俺は迷わず、
「ああ、いいぜ」
と答えた。一方でセイジも、
「レイの言っていることだから、俺も乗るよ」
と言ってくれた。
「…… わかった」
そう言って、レイはワープの準備を始めた。慎重に計器類を操作していくレイの手はどこか怖がっている様にも、心配していないようにも見えた。
「じゃあ、行くよ」
レイが合図をして、レバーを上げた。船の速度が上がる。だが、やはり前回のワープの時よりも強い衝撃が船内に駆け回った。
「うぐ! 」
俺たちは衝撃のあまりに思わず叫んだ。とてつもない負荷が体にかかる。まさしく命がけのワープだった。ワープを始めてから程なくして、船内のあちこちから火花が散り始めた。船自体にも相当な負荷がかかっている。オーバードライブとはこのことだった。次第に計器が壊れ始めて、散る火花の量も増えていく。配線がカバーを突き抜けて剥き出しになり、小さな火が燃え始めた。
「止めないと、バラバラになる! 」
「止めてくれ! 」
「早く! 」
レイは俺たちの言葉を聞いて、慌てて船の計器を操作した。ナビパネルに表示されておる座標は目的地まであと僅かなところだった。レイが船のワープを止めた。ワープエンジンが停止すると、船は一気に減速した。直後、船の明かりが全て消えた。
「何! 」
「おそらく、生命維持装置以外の全ての機能が停止した…… 」
「なんだって…… 」
俺たちは混乱する。更に幸か不幸か、俺の目の前に惑星の地表が見えた。
「なあ……、目の前の状況はどういうことだ? 」
「……、まずい! 地上に不時着する! 」
船は凄い勢いで、どこの星かわからない地面に向けて降下し始めた。船内がどんどん暑くなっていく。勢いはますます速くなって、ついに地面が目の前のところまで来た。
「頼む! 」
レイが急いで操縦桿を持ち上げた。直後、船の方向が少しだけ傾いて地面に斜めの向きに激突した。操縦室にとてつもない衝撃が走り俺は倒れた。レイもセイジも耐えられなかったようで、すぐにその場に倒れた。衝撃はなおも続き、船体はしばらく横にスライドし続けた末に止まった。目を開いて、窓の外を見るとそこは、雪山の中だった。
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