第31話

 ドン・マダーはとてつもなく苦しんでいた。後ろの部下達はどうすることもできずにいる。彼らは自らの意思では俺たち三人に報復すらしなかった。


「お前ら、このガキ三人を殺せ!! そうしないと、俺がお前らを一人ずつ殺してやる! あはは!! 」


 ドンは完全に狂っていた。部下達は自らの命を守るために俺たちに銃を向ける。この人数では、逃げても決して敵わない。部下が銃の引き金を引こうとしている。もうダメかと思った、その時、再び銃声が鳴った。直後、部下の一人の銃が宙を待っていた。


「誰だ! 」


 村の誰かが俺たちを助けてくれたようだった。辺りに隠れていた、村の人々が戦闘態勢で表に出てきた。


「こいつらもまとめて撃ち殺せ! 」


 ドンの命令で、部下の一人が発砲した。村の一人に当たりそうになる。


「こちらも撃て! 撃って生き残れ! 」

 

 村長が、自ら表に立って、指示をした。こうしてすぐに銃撃戦が始まった。銃弾が飛び交い、次から次に人に当たって倒れていく。俺は倒れたセイジを担いで、レイと共に安全な場所へと行くことにした。四方八方で戦闘が繰り広げられている。全力で走っている間に、ドン側は船から大砲を出して応戦し、村の人々も用意していた武器で報復を重ねる。一方では、槍などを用いた奇襲を敵に仕掛けている。俺たちは走った。走りながら何度も目の前や横で弾が当たったことによる爆発が起きた。逃げ隠れる場所がもうなかった。


 俺たちは何とかして岩場の後ろに隠れた。そこに隠れていても長くはもたないが、走り続けるよりはマシだった。


「どうする! 」


 レイが俺に尋ねてきた。銃声や爆発音がうるさくて聞こえづらい。


「どうするたって、船に戻ってセイジを手当てしないと! 」


「でも、船はここから反対の方向にある。激戦地に当たるから、生きて走り抜けられるかな…… 」


 俺は岩場に隠れて辺りを見回した。既に大勢がそれぞれの目的のために死んでいったらしい。眠ったまま動かない人、大怪我を負った人、仲間に助けてもらっている人。これが、人間というモノなのだろうか。生きるために仲間は大事にするが対峙する者は殺していく。それが人類史では何千回、何万回と繰り返されてきた。それでも、今の俺たちは生きるために走って、邪魔をしてくる連中は撃ち殺していくことしかできないようだった。俺は明日のために覚悟を決めた。


「…… レイ、どうやら俺たち、それしか生きる手段がもう残っていないや。ここにずっと隠れていても、いずれは弾が当たって死ぬ。だったら、少しでも生きれれる方へ走らないか? 」


「…… ああ。そうだね」


 俺たちは、岩場から離れて、走り始めた。何としてでも船に戻る。その一心だった。だが、向こうに行くには俺たちは劣勢だった。ドン側の方が人手も武器を多かった。船に近づけない。そう思った時、空からの銃撃が始まった。頭上を見ると、見知らぬ船が飛んでいた。

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