第30話

 朝日が登り始めたの合図に俺たちは草原の真ん中に立った。草原の辺りを木々が囲っているので、木の裏などに村の人々が武器を構えて隠れている。俺の時計は出発から丁度、二十四時間が経ったことを告げた。


「時間だ。来るぞ」


 それから二分くらい経って上空から大きな船が草原に着陸しようとしていた。ドン・マダーの船だった。船は着陸脚を広げて、地面を着く。着陸した衝撃が辺りに響き渡った。程なくして、船の出入口が開かれた。開かれた扉の向こうにはドンが嫌味な顔をして立っている。ドンは船のスロープをゆっくりと降りていく。それに続いて大勢の部下たちが現れた。全員、武器を持っていて、数もかなりいる。俺はとんでもない負け戦を始めてしまったのかもしれないと心の中で思った。ドンとその部下たちはゆっくりとした足取りで俺たち三人の元へと歩く。正面から見えるこの集団には凄まじい圧倒感がある。ドンが遂に俺たちの真正面に現れた。


「何か見つけたか」


 ドンはいかにも興味がなさそうな顔を浮かべて話しかけてきた。俺はそれに答える。


「もちろん。約束通り見つけ出した」


「どんな物だ。見せろ」


 俺は後ろにいるレイとセイジに向き直って目配せをする。それを見たレイは肩に掛けていたバックから慎重に鉱石を取り出した。もちろん、手元の鉱石はただのレプリカで、俺たちは厳重な取り扱いをしている演技をしているに過ぎなかった。慎重に扱う演技をしながら、レイは俺にレプリカを手渡した。手渡されると、俺はドンにレプリカを差し出した。


「これでどうだ」


「どんな物だ。教えろ」


「街一個のエネルギーを発している鉱石、これを売れば、俺たち三人を売るよりも高く売れるんじゃないのか」


「ふーん」


 ドンは手招きして、部下を呼んだ。部下は何も言わずにレプリカを俺の腕から取りあげて、船の方へと歩いていった。


「取引成立だ。俺たちを解放しろ」


 セイジがそう言った。ところがドンは少し考えるような仕草をしてから、銃を取り出した。


「何! 」


 俺は叫んだがもう遅かった。辺りに銃声が響く。振り向くと、俺の後ろにいたセイジの腹あたりから血が出ていた。セイジの口から血が少し垂れ落ちていく。


「セイジ! 」


「あはは!! 」


 ドンは大笑いした。一方でセイジは地面に倒れ込んだ。レイと俺がセイジの側に近寄る。血の勢いが止まらない。


「セイジ! セイジ! 」


「すま…… ん」


 彼の目が閉じてしまった。レイは慌てて手首を抑える。


「まだ、脈はあるけどすぐに手当てしないと危ない…… 」


 レイは冷静さを装っていたが、今にも泣きそうだった。俺も人のことは言えない状態だった。


「どうだ! 威勢の良いお前らもこうすれば大人しくなると思ってな! ざまあみろ! あははは! 」


 俺は目の前にいるこの男が許せなくなって、アリスの銃を取り出した。辺りにまた銃声が鳴り響いた。


「あああ! 目が!! 」


 今度は、俺の方があいつの片目を銃で撃ち潰した音だった。

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