第29話
村長によれば、現状アマゾネスでしか採掘することのできないその鉱石は、村の人々が四半世紀程前に発見し危険を承知の上で採掘作業を始めた。鉱山全体に遮蔽装置を設置したことで、開拓にやってきた多くの探検家は鉱石の存在に気づかずに帰っていったという。村での鉱石の使い道は生活に必要なエネルギーを取り出すためであり、研究はしたが兵器として実際には一度も使っていないのだという。村長は苦しい表情を浮かべている。
「…… これを渡さなければ、エドが守ってくれたこの地を失ってしまう」
「待ってください。エドと知り合いなのですか? 」
「ええ、そうです。彼は私たちと鉱石の存在に気付いてしまったのですが、隠し通すことを約束してくれたのです」
意外な事実だった。エドは以前、この星では何も見つけられなかったと言っていたが、本当は見つけて隠し通していたのだ。それを僕たちはあの海賊たちに渡さなければいけないのだろうか。そう思うと俺は申し訳ない気持ちになった。
「…… この星のことを話してしまって、すみませんでした」
俺の言葉を聞いた村長は優しい顔をして、何も言わないでくれた。村長や村のみんなのことを見ていると、俺は不思議とこのままじゃダメだという思いに駆られて、決意した。
「…… なあ。レイ、セイジ、俺たちであいつらと戦わないか? 」
レイとセイジ、村長は静かに話を聞いてくれた。俺は話を続ける。
「このまま鉱石を渡しても、俺たちは本当に生きて帰れるのか? 帰れたとしても、村のことをずっと後悔することになる! だから戦わないといけない気がする! 」
勢いに任せて俺は言い切った。言い切ったあと二人はなぜか笑い始めた。一通り笑い終えるとセイジが、
「いいぜ。俺は戦う」
その言葉はとても頼もしかった。続いてレイも、
「僕も戦う。海賊にやられた分はきっちり返したい」
レイの言葉にも覚悟を決めた響きがあった。二人の言葉を聞いた俺は、村長に対して話をする。
「シエナ、一緒に戦いましょう。お互いの明日のために」
「ええ、もちろん」
こうして、俺たちは明日、ドン・マダーとの決戦を挑むことになった。
村に戻った村長は大急ぎで戦いのための準備を始めた。村の人々が急ピッチで戦闘準備を行う。鉱石の力は一切使っていないが、高火力のレーザーブラスターや大砲、近接武器などが武器庫から次々と外へ運び出されていく。一方で俺たちは村の通信設備を用いて、アリスに応援を頼んだ。アリスは、出来る限り朝に間に合うようにここに向かうことを約束してくれた。心の準備を終えた俺は、アリスから受け取っていた銃を眺める。村長の判断でレイとセイジも銃を持っていくことになった。二人もそれぞれの心の決心をつけているようだった。ついに夜明けになった。ドンの到着まで残り一時間。決戦が始まろうとしていた。
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