第28話

 走り始めてから二時間程で車がついに停車した。全員が車から降りて、採掘場の入り口へと向かう。だが、目の前には採掘場らしき物は何も無かった。歩みを止めた村長はおもむろにデバイスを取り出して、操作した。


「解錠しました。これで採掘場へ入れます。どうぞ」


「…… どうぞと言われても」


 セイジが困惑したその途端、空間に穴が開いた。穴の向こうを覗くとそこには、採掘用の設備らしきものが確かに見えている。


「すごいや、ホログラムで隠されているのか」


 レイが説明をしてくれた。この山一帯に遮蔽装置が設置されていて、山を掘削した跡を隠しているのだという。すると村長が、


「その通りです」


 どうやらレイの見解は間違いなかったようで、レイは少し照れ臭そうにした。俺たちはホログラムの向こうへと入っていく。入ると、山は掘削されていて、既に開発されていた。


「私たちの村は元を辿ると、とある女性だけで構成された集団の存在に行き着きます…… 」


 村長は採掘場に併設された、施設へと向かう中で俺たちに村の歴史を教えてくれた。もともと、アマゾネスというのは半世紀以上前に結成された科学者集団の名前で、宇宙開拓が進むにつれて、メンバーだけで暮らせる場所を探すようになったのだという。探し続ける間にメンバーたちは家族と同等の存在になり、最終的に一つの生き方として、村として存在するようになった。村の技術が発達しているのは、村の起源が科学者達にあるからで、彼女らが発明した物を子孫たちが発展させ続けているからだと言う。


 俺たち一行は施設に入って、しばらく歩くと一つの部屋に行き着いた。村長の護衛たちが部屋の備え付けのパネルを操作した。パネルが操作された後、部屋の中央に円形のテーブルが床から上がってきた。テーブルが出現してすぐに、今度はテーブル中央に穴が開き、中から鉱石らしき物が現れてきた。村長はそれを慎重に手に取った。


「これが、私たちが持っている中で一番価値のある資源です」


 村長はそう言うと、レイに鉱石を渡した。レイは鉱物にも詳しかったので、すぐに鉱石を見回った。鉱石を見ていく内にレイの表情がだんだんと深刻になっていく。


「…… コレを渡して平気なんですか? 」


「平気ではありませんが、これを渡すしか私たちに生き残る術が無いのです」


「そんな…… 」


 レイと村長の顔がどんどん深刻さを増していく。俺とセイジは状況を理解できなかった。


「なあ、それってそんなに大事な物なのかよ」


 セイジがレイに尋ねた。俺も気になる話しだった。なぜ、そこまで深刻な話になるのだろうか。


「…… この鉱石は、上手に使えば一欠片で小惑星一個を半壊させられる」


 俺とセイジは絶句した。気になって時計を見ると、残り八時間弱。いつのまにか、俺たちの人生最大の選択が迫っていた。

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