第15話

「こっちに来たまえ、さあ今からご馳走だ」


 戻ってくるなりエドは手招きをしながらこう言った。俺たちは昼から何も食べてなかったこともあって、彼についていくことしかできなかった。


 しばらく歩くと、これまた豪華な部屋へと案内された。広めの空間に綺麗に整えられた大きなダイニングテーブルが一つと、豪華な装飾の施されたイスが左右合わせて十席ほど並べられ、壁には価値のありそうな大きい絵画が掛けられている。俺たち3人は横に並んで座る。エドは俺たちと対面できるように斜め前に座った。それから程なくして、アルフレッドがご馳走を人数分運んできてくれた。


「さあ、ゆっくり食べてくれ」


「いただきます…… 」


 エドに言われるがまま、俺たちはご馳走を口へと運ぶ。とても美味しい。気がつくと、料理を口へと運ぶ手が止まらなくなっていた。


「君たちのデバイスを直すのに時間がかかりそうなので、しばらくここに泊まるといい。必要なことがあったらアルフレッドに聞いてくれ」


 食事が一通り済んだあと、エドはこう言ってくれた。俺たちは断る理由もなかったので彼にレイのデバイスを渡して、アルフレッドに部屋へと案内してもらった。部屋へと入ると、やはり部屋はとても広くて、俺たち三人がしばらく滞在する分には困らない環境だった。


「なあ俺たち、とんだ所まで来ちまったな」


 部屋に荷物を広げ、三人それぞれシャワーを浴びたあと、いざ寝ようとした時にセイジが少し楽しげにこう言った。


「だね」


「そうだな」


 レイと俺も同感の言葉を愉快げに言う。直後、俺たちの間で爆笑が起こった。


「俺たちの街からまさか、ここまで行くことになるなんて」


 俺が笑いながら呟いた。すると、どういうわけか笑いながら俺の目から涙が出てきた。


「おい、ワタル大丈夫か? 」


「大丈夫」


 俺は笑い泣きながらセイジの心配に対して“大丈夫”と言ってしまった。心のどこかでは大丈夫じゃなかったはずなのに。この時の俺は感情を整理しようにもできなかったし、どんな感情なのかもをうまく言葉にはできなかった。レイとセイジはそれを汲み取ったのか何も言わずにいてくれた。俺が一通り泣き止んだタイミングでドアをノックする音がした。


「はい」


 レイが応じるとドアの向こうからエドがやってきた。彼は少し優しい表情で話をはじめた。


「明日の朝、君たちを連れていきたい所がある。良いかな? 」


「…… 良いですよ」


「良いですが」


「構いませんよ」


 特にここでやることを決めていなかった俺たちは、エドの提案に乗ることにした。

むしろ、この地でやることができてありがたかった。


「じゃあ決まりだ。では、おやすみ」


「おやすみなさい」


 三人揃ってエドに挨拶をした。彼はそれを聞くとドアの向こうへ去っていった。俺たちは一日動き回って疲れていたので、程なくして部屋の明かりを消してベットに入った。


 窓から月がよく見ていた。

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