第4話

 俺は黄昏たまま家へと着いた。なんの変哲も無い二階建ての一軒家。リビングに向かうと晩ご飯を作っていた母がいた。忙しそうだったので母とは特に何も話さず俺は階段を登って上へと上がり自分の部屋に入った。どうやら父はまだ帰ってきていないようだった。


 荷物を置いて、着替えた後でリビングへと向かい、ご飯を食べることにした。下へと降りる。母は何も言わずにご飯を出してくれたが、心の中は冷めきっていたと思う。俺の家族の関係は少し拗れていた。俺が歳頃だったということも大きいが、両親は喧嘩が絶えなくなり、俺はその影響でどちらからも冷たく扱われていた。今思うとこれは異常だった気がしている。それでも、当時の俺にはどうすることもできず、ただただ、世界から必要以上に無視され続けられているような心地がしていた。


 会話も無い食卓。かまってもらいたくは無い。でも、本当に何もかまってくれないのが辛かった。


「ねえ、最近何か隠してるでしょ? 」


 母が尋ねた。意外な言葉に動揺しながらも俺は答えようと口を開くが、


「何か隠してるでしょ! 」


 その時、母は叫びながら皿を俺に叩きつけた。咄嗟のことで混乱したが、母は俺の答えを聞く前に怒鳴って、物を投げた。それだけの事実がそこにあった。俺はまたこれかとなって、怒鳴る母を宥めるために対話を始めた。


「落ち着いて。何も隠してはいないから」


「そんなの嘘だ! 」


 確かに宇宙船のことは隠していたので実際嘘になる。それでも、そう言うしかできなかった。


「......わかったわ」


「…… 」


 母は十分ほどヒステリックになった後すぐに落ち着いた。



 落ち着いたのを見計らって俺は自室へと戻った。直ぐに母との対話で疲れ果て、明かりも点けずにベッドで横になる。当時の俺はこのヒステリックな母とこの惨状を見もしなかった父との日々に限界を感じていた。



 二、三時間ほど寝た後でモバイルにメッセージが来ていたことに気がついた。相手はレイとセイジで、こう書かれていた。


『宇宙船の件で思いついたことがある

至急、赤松公園へ』


 それを読んだ俺はただならぬ直感が働いた。そして、レイとセイジに会うために急いで身支度を済ませて、俺は母に気づかれぬように玄関へと向かい、家を出た。


 時刻は二十一時を過ぎていて、田舎とはいえ光っている町のネオンを横目に俺は全力で自転車を漕いでいる。二人が指定した赤松公園は高校からは近かったが、俺の自宅からは遠かった。十五分ほどかけて俺は公園にたどり着いた。


 辺りを見回すと少し遠くの方にレイとセイジが見えた。二人は少し前からいたようで、既にその場のウッドテーブルに様々な資料を置いて打ち合わせをしているようだった。


 俺は自転車を停めて、ゆっくりと二人の元へと向かう。夜の闇を照らしている月はとても輝いていた。

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