第2話 過去と片思い
「……きて、起きて!」
声が聞こえた。
どこか懐かしい女子の声が。夢でも見ているのだろうか。夢はよく見るが、女子に起こされる夢は初めて見る。一緒に寝る夢ならよく見るが。
「……ん、んー」
小さく唸り声を上げながらも、俺は目を覚ます。微かに眩しい光が目に入る。電気つけっぱなしで寝てしまった。
「やっと起きた!」
……は?
何これ。夢じゃない、だと。
「もう、授業中ずっと寝てたよ」
「なんで、彩葉さんが?」
「なんでって、そりゃ今日は平日だからね」
「いや、そうじゃなくて。どうして俺の目の前に彩葉さんがいるの?」
「さっきから何言ってるの? 昨日も会ったじゃん」
「会ってない。昨日は会社にいた」
「会社って。就職先もまだ決めてないのによく言うわ」
この理解不能な状況に、とりあえずは周りを見渡してみる。
誰もいない教室。制服姿の俺。目の前には当時好きだった彩葉さん。
まさか、これって……。
「それにしても影くん、今日授業中ずっと寝てたよ。最近寝不足? 幸い、一番後ろの端の席だったから先生にはバレなかったけど。でも放課後になっちゃったし、みんな帰っちゃったけど私、影くんが起きるまでずっと待ってたんだよ」
「それは、ありがとう。ねえ」
「何?」
「俺のほっぺつねって」
「はあ?」
「いいから」
「分かったわ。ほい」
「いだだだだだだー!」
軽い感じだったのに、どんだけ凄まじい力だよ。
「え、ごめん。手加減したつもりだったんだけど」
まじかよ……。
それよりも、これ夢じゃないじゃん。
つまりは高校時代にタイムリープしたってことか!?
いつ、どこで!?
俺は寝ていた前の記憶を脳から探し出してくる。見つかった。謎の少女から貰ったブラックコーヒーを飲んだところから、異変を感じたんだ。意識を無くしてしまい、挙げ句の果てタイムリープまでしてしまった。
ふと少女が最後に言った言葉を思い出す。素敵な出会いってこう言うことかよ。確かに嬉しいけど、頭が混乱するばかりだ。
「寝起きにしては険しい顔してどうしたの?」
「あぁ、ちょっとな。聞きたいんだけどさ、昨日の俺何してた?」
「普通に隠キャしてた」
「なんだそれ」
ついに俺の暗黒時代が蘇ってしまったのか。学生時代は本当に人と関わることが苦手で殆ど彩葉さん以外とは話さなかったもんな。
不思議と彩葉さんとは平然と話せるんだよな。
もしかして二人の相性が良い?
いやいや、ただ単に彩葉さんの話し方が上手なだけだ。
それにしても、急に高校時代に戻されても記憶が曖昧すぎる。これは昔の記憶だろうか、それともタイムリープした新しい記憶だろうか。
とりあえずは昨日のこの時代の俺、変なことしてなくて良かった。別にしないけど。
いちいち色々考えても仕方がない。
まぁ、せっかく過去に戻ったんだ。まずは彩葉さんに告白しないといけない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます